研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
26112004
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
小池 康晴 東京工業大学, ソリューション研究機構, 教授 (10302978)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 神経科学 / リハビリテーション / 解析・評価 / モデル化 |
研究実績の概要 |
本研究では、数理モデルを用いた解析技術を、学習の発達の過程での回路の遷移や損傷・障害からの回復における回路の再編に関与する神経機構を明らかにする研究に応用することを目的としている。このとき、身体のダイナミクスを考慮に入れた筋骨格系モデルを用いて、脳活動と運動データとを関連づけ、因果関係を特定することを目指している。 本年度は、手指の運動を対象に、fMRI画像から得られた賦活領域と解剖画像を用いて、運動に関連する運動関連領野の信号源を脳波から推定した。対象とする運動は、屈曲・伸展だけでなく、そのときの強度も2段階に変えて行った。変分ベイズ法を用いた信号源推定法を用いて、屈曲・伸展、屈曲の強と弱、伸展の強と弱の違いを分離する識別器を機械学習により獲得させ、そのときの識別器の重みの特徴から、識別に有効な領域を調べたところ、中心溝近辺の手指領域に信号源が選ばれていることを確認した。また、複数の被験者において高い精度で各タスクが識別できることが分かった。 また、身体のダイナミクスを考慮に入れた筋骨格系モデルを作成するために、肩3自由度、肘1自由度のモデルを作成し、各22個の筋肉の張力から関節トルクを計算し、そのトルクを元に運動を生成するモデルを作成した。作成したモデルに筋肉への運動指令を入力することにより、人の運動の特徴である、ほぼ直線で、一つの頂点を持つ釣り鐘型の速度波形を示すことを確認した。 脳の活動、身体の運動の情報を解析するツール群を拡充させ、様々な計測データに適応できるようにしていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、大規模データ解析手法の開発と、多自由度腕のダイナミクスモデルの作成を計画していた。大規模データ解析手法の開発では、タスクを実行中の運動関連領野の情報表現を解析するために、fMRIを用いた解析や、脳波を用いた解析を行った。fMRIを用いて、ボクセルデータだけによる、運動の識別や、脳波から信号源を推定することによる運動の識別を行った。運動関連領野のボクセルデータや、信号源データにより精度よく運動が識別できることが分かった。ECoGを用いて運動識別でも、一次運動野のほぼ同じ位置が最も関連しているデータが出ているが、電極の大きさや電極間距離が大きいため、脳波から求めた信号源などとは直接比較することが難しいが、どの信号を用いても運動の識別が高精度でできていることから、当初の計画通り、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
現在は、脳の活動データと、そこから運動を識別することで、領野間の関係を調べているが、回路シフトを解明するためには、それぞれの運動時の時系列データの解析が不可欠である。脳活動から、筋骨格系モデルの入力である、各筋への運動指令に変換するアルゴリズムなどを開発し、今後は、様々な運動や、計測データに本手法を適用し、回路シフトがどのように起こるのかについて、損傷前後のデータの解析や、運動学習前後のデータ解析などを進めていく予定である。
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