研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
26112005
|
研究機関 | 玉川大学 |
研究代表者 |
礒村 宜和 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (00415077)
|
研究分担者 |
酒井 裕 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (70323376)
|
研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
|
キーワード | 神経科学 / 脳・神経 / 生理学 |
研究実績の概要 |
動物はオペラント学習により目的に応じた適切な行動を獲得し、その行動はやがて習慣化する。この行動適応の過程には、大脳皮質‐基底核回路の並列ループ(辺縁系ループ、前頭前野系ループ、運動系ループ)間の機能シフトが関与する。本研究では、ラットのオペラント学習と習慣化の進行に伴う並列ループ間の機能シフト動態を、独自の行動実験系に多領域マルチニューロン記録と光遺伝学技術を組み合わせて観測し、機能シフトを担う神経回路の仕組みと働きを因果性をもって解明する。さらに、実験により得られた知見の計算論的な役割(意義)を理論的モデルの構築を通じて導出し、実験と理論の両面から機能シフトの本質を統一的に理解する。 初年度(平成26年度)は、頭部を固定したラットに前肢でスパウトレバーを操作させて、行動の開始と抑制を適切に制御する「行動抑制」を観測するための新規行動課題「自由選択型ストップ-シグナル課題」を効率的に学習させる実験系を確立することに成功した。2年度目(平成27年度)は、この行動課題を遂行中のラットの一次および二次運動野、眼窩前頭野、後頭頂連合野の神経活動を多領域マルチニューロン記録法により記録し、実験データを蓄積した。3年度目(平成28年度)は行動データとスパイクデータの各種解析と解釈に集中し、この行動課題でみられる2種類の「プロアクティブ抑制」に対し各領域の神経細胞が異なる活動を示すことを示した。特に、二次運動野の神経細胞は試行ブロックに基づき変化するプロアクティブ抑制に相関した活動の変化を示すことを見出した。この研究成果は、海外での学会発表も終えて、現在は国際誌に投稿するために論文を鋭意執筆中である。その他に本研究に関連する数編の論文発表もおこなった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当該年度の主な研究目標は、大脳皮質の多領域の神経活動の実験データの蓄積とそのデータ解析に集中することであった。実際に予定通りに大脳皮質4領域の神経活動のデータ収集と解析を進めて、二次運動野の神経細胞がプロアクティブ抑制に関与しているという新知見を得て、論文を執筆しているところである。また、関連する研究成果の論文発表もおこなった。従って、平成28年度の本研究計画の実施はおおむね順調に進展していると考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
現在、本研究はおおむね順調に進展しており、今後の研究の推進方策としても、計画の変更を要する問題点は生じておらず、当初の研究計画に沿って着実に実現していきたい。特に次年度(平成29年度)は、自由選択型ストップ-シグナル課題を遂行中のラットを対象として、大脳皮質や大脳基底核を中心とするマルチニューロン活動を記録する行動・生理実験を再開・継続し、オプトジェネティクスなどの技術も導入して、さらに掘り下げて解析していきたい。
|