研究領域 | 行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構 |
研究課題/領域番号 |
26112006
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
藤山 文乃 同志社大学, 脳科学研究科, 教授 (20244022)
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研究分担者 |
窪田 芳之 生理学研究所, 基盤神経科学研究領域, 准教授 (90192567)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 大脳基底核 |
研究実績の概要 |
運動学習においては、試行錯誤しながらそのスキルを獲得する初期の時期(獲得期)と、習熟した後にそのスキルのさらなる上達のための時期(熟練期)が存在する。最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある (Yin et al., 2009)。この線条体領域は大脳皮質の異なる領野を反映したものであるが、大脳皮質―基底核―視床ループを規定している要因には、他に大脳皮質の層構造、線条体のストリオソーム/マトリックス構造、視床の亜核、およびこの三要素の相互関係などが報告されており)、この複雑な回路網の中で“真の機能領域”を見抜く必要がある。特に視床入力と線条体のストリオソーム・マトリックスというコンパートメント構造の関係に関しては明らかにされていなかった。私たちは視床から線条体への興奮性入力はマトリックスに比べるとストリオソームへの入力は3分の1程度であることやシナプス構造が違うことなどを報告しており (Fujiyama et al., 2006)、このことから視床線条体入力においてストリオソームとマトリックス各々に特徴的なネットワークがあるのではないかと考え、膜移行性シグナルをつけたウイルスベクタによる単一ニューロントレースを行なった。その結果、束傍核はマトリックスに優位に、正中核群からはストリオソーム優位に、束傍核以外の髄板内核群からはストリオソームとマトリックスに同程度の投射があることが新たにわかった (Unzai et al., Cerebral Cortex, 2017)。さらに、ストリオソームやマトリックスに特異的に投射する視床亜核の大脳皮質への投射先は、その視床亜核が投射している線条体のコンパートメントに優位に投射している皮質領域であることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験のための基本設備が早い段階で完備したためと考えられる。具体的には、動物(ラットおよびマウス)を維持管理する飼育設備、形態学(共焦点顕微鏡、電子顕微鏡等)および電気生理学(マルチニューロン記録等)のセットアップが整った。より精度の高い電気生理実験装置と、データ最終的な解析としてニューロンの再構築のために用いる画像3次元解析用システムも導入でき、計画どおり実験を進めていくことが可能な状況である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度まで膜移行性シグナルをつけたウイルスベクタによる単一ニューロントレースにより、束傍核はマトリックスに優位に、正中核群からはストリオソーム優位に、束傍核以外の髄板内核群からはストリオソームとマトリックスに同程度の投射があることを解析した(Unzai et al., Cerebral Cortex, 2017)。さらに、ストリオソームやマトリックスに特異的に投射する視床亜核の大脳皮質への投射先は、その視床亜核が投射している線条体のコンパートメントに優位に投射している皮質領域であることも判明した。しかしこの視床投射の相手が、線条体および大脳皮質でどのニューロンであるのかはわかっていない。今年度は、このポスト側のニューロンを遺伝子工学的に明らかにしたうえで、視床亜核からの投射入力様式を明らかにする。また、線条体のなかで、大脳皮質からの入力と視床からの入力がどのように収束するのかをウイルスベクターとコンヴェンショナルなトレーサーを組み合わせて明らかにする予定である。さらにこの入力がそのニューロンの樹状突起のどこにどのように入力するのかを共焦点顕微鏡を用いて明らかにする予定である。脳領域レベルと細胞レベルの両面からアプローチすることで、真の大脳皮質―基底核―視床ループ内の結合様式が明らかになると考えている。本研究を通じて得られた解剖学的所見は領域内の他のチームに提供し、共有する。
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