研究実績の概要 |
運動学習においては、試行錯誤しながらそのスキルを獲得する初期の時期(獲得期)と、習熟した後にそのスキルのさらなる上達のための時期(熟練期)が存在する。最近この運動学習の過程には、線条体の異なる領域間での機能シフトが関与するという報告がある (Yin et al., 2009)。この機能シフトを実現する、大脳皮質―基底核―視床ループを明らかにするために、前年度までは膜移行性シグナルをつけたウイルスベクタによる単一ニューロントレースにより、束傍核はマトリックスに優位に、正中核群からはストリオソーム優位に、束傍核以外の髄板内核群からはストリオソームとマトリックスに同程度の投射があることを解析した(Unzai et al., Cerebral Cortex, 2017)。さらに、ストリオソームやマトリックスに特異的に投射する視床亜核の大脳皮質への投射先は、その視床亜核が投射している線条体のコンパートメントに優位に投射している皮質領域であることも判明した。しかしこの視床投射の相手が、線条体のどのニューロンであるのかはわかっていなかった。このため、当該年度では、線条体のポスト側のニューロンを、パルブアルブミン樹状突起発現遺伝子をもつマウスで可視化し、視床亜核にウイルストレーサーを打ち分けることで、視床亜核から線条体パルブアルブミンニューロンへの投射入力様式を明らかにした。さらにこの入力がそのニューロンの樹状突起のどこにどのように入力するのかを共焦点顕微鏡を用いて明らかにし、皮質入力と視床入力の差異を調べることで、大脳皮質―基底核―視床ループの特性を解明した (Nakano et al., J Neurosci Res, in press) .
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