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2017 年度 実績報告書

脳・脊髄損傷後の機能回復過程における神経回路の動的変容

計画研究

研究領域行動適応を担う脳神経回路の機能シフト機構
研究課題/領域番号 26112008
研究機関京都大学

研究代表者

伊佐 正  京都大学, 医学研究科, 教授 (20212805)

研究期間 (年度) 2014-07-10 – 2019-03-31
キーワード大規模回路 / 脊髄損傷 / 機能回復 / 把持運動 / デコーディング / 運動野
研究実績の概要

頚髄の部分損傷後の運動機能回復メカニズムを解明するために、ECoG電極を用いて記録した損傷前後の両側の運動前野、一次運動野、一次体性感覚野の活動と、15種類の手指の筋肉の筋活動と脳活動との関連についての解析を進めた。
解析の結果、損傷と反対側の運動前野から一次運動野への神経回路と、損傷と反対側の運動前野から損傷と同側の運動前野への神経回路において可塑的変化が示された。損傷と反対側の運動前野から一次運動野への神経回路では、損傷直後においてhigh-γ帯域でのconnectivityが強くなり、巧緻運動機能が回復するにつれconnectivityが弱くなっていき、巧緻運動機能が十分に回復すると、connectivityは損傷前と同程度になった。一方、損傷と反対側の運動前野から損傷と同側の運動前野への神経回路では、損傷直後から十分に機能が回復する過程において、α帯域でのconnectivityが徐々に強くなっていくことが示された。また、これらの脳活動が損傷側の手指の筋活動に関する情報を有しているかどうかをdecodingしたところ、高い相関係数を示し、筋活動を推定できることが明らかになった。以上の結果から、損傷後の運動機能回復過程では、損傷と反対側の脳活動だけではなく、反対側の運動前野から同側の運動前野への活動が深く関連していることが示唆された。
両側の運動前野を結ぶ経路が回復に重要であるという結果を得た。ウイルスベクター二重感染法を用いてその回路を機能遮断して回復に与える影響を明らかにするために、まずラットを使用し、大脳皮質間での遺伝子発現効率が高くなるウイルスベクターの組み合わせを調べた。その結果、逆行性としてはAAV2-retro、順行性ではAAV-DJが最も有効であることが示された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

ECoG電極で記録された大規模データを基に、脊髄損傷からの機能回復過程において、複数の脳領域・半球間をまたいだ脳領域間の情報の詳細な流れや、connectivityが回復時期によって変化することを明らかにすることができた。また、ウイルスベクター二重感染法において、左右の大脳半球間をまたぐ経路で遺伝子発現効率が高いウイルスの組み合わせを導き出し、機能回復における脳内の特定回路の機能を解析できるようになった。

今後の研究の推進方策

これまでの損傷モデルでは、機能回復が始まるとすぐにある程度まで回復していた。今後は損傷の大きさを大きくすることで、回復過程及び回復に関わる神経機序がどのように変化するかを調べる。さらに、ラット用いた先行実験から得られた遺伝子発現効率の高いウイルスベクターの組み合わせを、ニホンザルに導入し、大脳半球間を結ぶ経路の機能を調べる。また、ECoG電極で記録された大規模データの解析法や新たなウイルスベクターの組み合わせを、一次視覚野損傷後の機能回復過程にも適用し、視覚機能過程も明らかにしていきたい。

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2018 2017 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件) 学会・シンポジウム開催 (1件)

  • [国際共同研究] KU Leuven(ベルギー)

    • 国名
      ベルギー
    • 外国機関名
      KU Leuven
  • [国際共同研究] Newcastle University(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      Newcastle University
  • [学会発表] Dissecting the recovery mechanism after spinal cord injury by multidisciplinary approaches.2017

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Isa
    • 学会等名
      Cold Spring Harbor Asia Synposium "Primate Neuroscience"
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Neural mechanism of blindsight2017

    • 著者名/発表者名
      Tadashi Isa
    • 学会等名
      新学術領域「適応回路シフト」第2回国際シンポジウム
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 第40回日本神経科学大会2017

    • 著者名/発表者名
      山本勇祐, Zenas C Chao, Tadashi Isa 伊佐正
    • 学会等名
      マカクザル前頭眼野におけるサッケード関連活動
    • 国際学会
  • [学会発表] Anatomical properties of the cholinergic projection from the parabigeminal nucleus to the superficial layer of superior colliculus2017

    • 著者名/発表者名
      Kota TOKUOKA, Masatoshi KASAI, Tadashi ISA
    • 学会等名
      Society for Neuroscience 2017
    • 国際学会
  • [学会・シンポジウム開催] 第7回日本マーモセット研究会大会2018

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公開日: 2018-12-17   更新日: 2022-03-29  

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