計画研究
情動や注意の制御にかかわる大脳皮質神経回路について、それが正常に機能しているときと障害が生じているときで、どのような「回路シフト」が生じているかを調べるために、本年度は、以下の項目を達成した。1)サルの情動や気分の評価基準となる行動学および生理学上の条件を探索した。行動学的には、ケージ内の自然行動、ケージ内での飲水行動(スクロース選好性)、改変ブリンクマンテストが、それぞれ、活動性、快楽追求性、意欲の指標となりうることを確認した。また、生理学的には、血中のコルチゾールの測定により、ストレスの度合いの客観的評価となりうることを確認した。2)上記の指標を用いて、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)の情動への影響を評価したところ、内側前頭皮質(mPFC)に対する低頻度刺激によって、著しくサルの気分状態が低下することが明らかになった。3)遅延反応課題を遂行中のサルの前頭連合野、運動前野に片側性のTMSを施して脳活動を阻害し、行動への影響を調べる実験を行い、課題遂行に関係した手の運動および眼球運動について解析を行った。その結果、いずれの領域の機能阻害によっても、課題に関連した手や眼球の運動障害は生じないこと、前頭連合野の阻害によって視空間性のワーキングメモリ(刺激位置情報の保持)の障害が、運動前野の阻害によって運動性のワーキングメモリ(運動企図情報の保持)の障害が生じることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した内容のうち、1)サルの情動・気分評価基準の確立、2)経頭蓋磁気い刺激を用いて情動・気分を操作する方法の探索、については、完全に目標を達成することができた。3)遅延反応課題遂行中の皮質表面電位の記録については、同課題遂行中の反復経頭蓋磁気刺激の影響を調べる研究において、予想以上の成果が得られ、追加実験やデータの分析に時間を要したため、皮質表面電位の記録は次年度以降に行うことにした。
研究はおおむね順調に進展している。サルの情動・気分については、反復経頭蓋磁気刺激の神経活動および行動への影響を調べる実験をすすめていく。注意の神経機構については、皮質表面電位の記録について、実験を加速させていく。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (19件) (うち国際学会 12件、 招待講演 4件)
Journal of Neuroscience
巻: 36 ページ: 3038-3048
10.1523/JNEUROSCI.2063-15.2016.
Journal of Neruoscience Methods
巻: 263 ページ: 68-74
10.1016/j.jneumeth.2016.02.005.
Journal of Neurophysiology
巻: 114 ページ: 2600-2615
10.1152/jn.00097.2015.
PLoS One.
巻: 10 ページ: e0128020
10.1371/journal.pone.0128020.