計画研究
代表者の廣瀬は、細胞内構造体の構築を司るarcRNAタクソンの確立を目指した解析を行った。第一にパラスペックル構造体の骨格として機能するNEAT1 lncRNAの機能領域を特定するために、CRISPR-Cas9ゲノム編集系を駆使した変異解析を継続し、パラスペックル構造形成を担うA,B,C領域を同定した。さらにその機能領域を絞り込み、これまでに800塩基領域までに狭めることに成功した。またそのRNAを試験管内で合成して細胞抽出液と混合すると、液体相転移(LLPS)を誘発できることを明らかにした。一方で、arcRNAの一般性を示すために新規arcRNAの探索を実施した結果、RNase処理に対して感受性を示す複数の核内構造体の存在を明らかにした。またarcRNAが共通してRNA抽出液に対して難溶性を示すことを発見し、それを指標にした次世代シーケンス解析により50種以上の難溶性RNAを同定し、そのうち発現の多い8種類が、新規核内構造体に局在することを発見した。これによってarcRNAの一般性が示され、これを独立したncRNAタクソンとして確立できる道筋が整った。分担者の富田は、miRNA前駆体の5’末端リン酸基をジメチル化すると報告がなされていたBCDIN3Dが、細胞質tRNAHisの5’末端をモノメチル化する活性を有すること実証し、BCDIN3DがtRNAHisに特徴的な8ヌクレオチドからなるアクセプターヘリックスの長さ、アクセプターステムのG-1: A73ミスペア、G-1を認識していることを明らかにした。また、U6 snRNAの成熟過程、リサイクルに関わる3’末端へオリゴU配列を付加するTUT1単体、およびヌクレオチドとの複合体の3次元構造決定に成功し、TUT1が特異的にU6 snRNAを認識し、その3’末端にオリゴU配列を付加する分子機構を明らかにした。
1: 当初の計画以上に進展している
ゲノム編集を用いた作動エレメントの絞り込み作業も順調に進んでおり、arcRNAの作動メカニズムの理解に向けて着実に研究が進展している。さらにタクソンの確立に向けたarcRNAの探索についても、2つの異なるアプローチによる探索が順調に進展し、国際的に評価が高いジャーナルに2本の論文を発表することができた。これによって、arcRNAタクソンの確立への道が整備されてきたと考えられるために、これらの成果は当初の計画以上に進展しているものと考えられる。
arcRNAの確固とした作動エレメントを同定し、arcRNA機能を司る基本的分子機構を明らかにするため、引き続きゲノム編集による変異解析を行う。さらにそれに加えて、分子繋留解析による作動エレメントの相互作用タンパク質の機能解析や本年度明らかになってきたin vitroでのLLPS誘発と作動エレメントの関連などを含めた多面的な機能解析を実施する。一方で、前年度の探索で同定した新規arcRNA候補の機能解析を進めて、arcRNA機能の一般性とそれを担う作動エレメントの同定を通して、arcRNAタクソンの確立へと導く。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (11件) (うち国際共著 3件、 査読あり 11件、 謝辞記載あり 5件) 学会発表 (33件) (うち国際学会 7件、 招待講演 13件) 図書 (1件) 備考 (1件)
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