研究領域 | ノンコーディングRNAネオタクソノミ |
研究課題/領域番号 |
26113004
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
塩見 美喜子 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (20322745)
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研究分担者 |
大野 睦人 京都大学, ウイルス研究所, 教授 (80201979)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | ncRNA / 細胞内局在 |
研究実績の概要 |
【塩見グループ】 piRNA生合成の場であるYb bodyの構成因子の一つであるVretに対するモノクローナル抗体を作成し、これを用いてOSCより免疫沈降を行なったところ、複数のタンパク質が得られた。Yb、SoYb、Vret、Armiは得られたが、新規因子は得られなかった。異なる因子に対する抗体を作成し、それを用いて免疫沈降すれば新規因子が同定できる可能性があるため、SoYb抗体の作成をすすめた。
importin a/bなど既知の核局在因子をノックダウンし、Piwiの核局在への影響を免疫染色で観察したところ、importin aがPiwi-piRNA複合体の核移行に重要であることが判明した。ショウジョウバエは3つのimportin a遺伝子を発現する。興味深いことに、1、2、3いずれのimportin aを欠失した場合でも、Piwiの核移行に影響があらわれた。典型的なNLSを有するタンパク質においても同様の結果が得られたため、Piwiに特有な減少ではないと判断した。各importin aに対するモノクローナル抗体の作成をすすめたところ、importin a1と3に対する抗体は得られた。現在、importin a2に対する抗体を作成中である。
【大野グループ】哺乳類細胞核で多量に発現しているlncRNAであるNeat1、Malat1、gomafu、Xistの様々なcDNAクローン、発現コンストラクト、培養細胞などの準備を行った。そして手始めに、分子機能や結合因子などの情報が比較的研究されているマウスNeat1に着目し、それを1kb程度のRNA断片としてアフリカツメガエル卵母細胞核に顕微注入したところ、核外輸送がほとんどみられない断片が複数見つかった。しかし、RNA断片の安定性が低下していたので、輸送阻害をクリアーに示すためには、RNAの安定性の問題と切り分ける必要が生じた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
【塩見グループ】 本年度の計画にそって実験をすすめることが出来たのみならず、論文発表することができた。また、non-coding RNAに関する総説の編集依頼を受けた(執筆中)。学会発表も滞り無く行なった。招待講演の依頼も複数受けた。
【大野グループ】 領域内の中川博士、廣瀬博士らの協力により、実験材料の準備は順調に進んだ。また、アフリカツメガエル卵母細胞を用いたRNA輸送の系がlncRNAの場合にも使用可能という感触を得た。RNA断片の安定性が低下していたが、RNAの輸送と安定性の問題を切り分ける方策はある。
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今後の研究の推進方策 |
【塩見グループ】(1)Yb bodyの構成因子を網羅的に同定し、その機能解析をすすめると共にYb body形成における上下関係を調べる。一旦SoYbモノクローナル抗体は作成できたが、isotypeがIgMで生化学的な実験には不向きであった。そこで再度SoYbモノクローナル抗体の作成をすすめている。マウスは既にSoYbに対して反応性を示しているため、近々hybridoma作成にとりかかる。SoYb抗体が入手できたのであるならば、その抗体を用いて免疫沈降を行い、Yb bodyの新規因子の同定をこころみる。各因子をRNAiした条件下で免疫染色を行い、因子のYb body形成におけるヒエラルキーを解析しつつあるが、これを続投する。
(2)細胞内にはpiRNAに結合していないPiwiとimportin aの結合を阻害するタンパク質が存在する可能性が示唆された。この因子の同定をすすめる。同定されたあかつきには、その因子の機能解析をすすめる。importin a2に対する抗体を作成中である。マウスは既にSoYbに対して反応性を示しているため、近々hybridoma作成にとりかかる。
【大野グループ】Neat1をさらに細かい300塩基長程度の断片に分割し、U1 RNAとのキメラを作ることにより、RNA断片の安定性を向上させる。輸送阻害がみられる断片が複数得られることが期待されるが、それらRNA断片同士の交差競合実験を行うなどして、核内保持活性を証明する。さらに、イントロン配列など既知の核内保持配列との競合実験を行い、その核内保持活性の正体を探る。
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