計画研究
高等真核生物の核内は高度に組織化されており、特定の核内プロセスを制御する各種核内構造体で満たされている。パラスペックルはノンコーディングRNAであるNeat1を骨格として40種類以上のRNA結合蛋白質が集積した核内構造体であり、パラスペックルを欠損するNeat1のノックアウトマウスでは妊娠黄体形成不全による血中プロゲステロン濃度の低下によってメス個体の妊孕性が著しく低下することが知られている。本年度は、パラスペックルの動作原理を明らかにするために、超解像度顕微鏡を用いてパラスペックルの詳細な構造観察を行った。その結果、パラスペックルがドーナツ状(もしくはバウムクーヘン状)の構造をしていること、そのリング部分とコア部分にNeat1の両端領域、および中心領域が、それぞれ規則正しく配置されていることが分かった。また、パラスペックル構築に必要なタンパク質であるSfpqはコア部分に存在し、Neat1の中心領域と共局在していることが分かった。また、新たなパラスペックル構成因子を同定するためにNeat1に対するアンチセンスオリゴを用いて黄体細胞の初代培養からパラスペックル複合体を生化学的に精製し、次世代シークエンサーを用いてそこに含まれるRNAを解析した。その結果、パラスペックルには核スペックルに局在することが知られていたMalat1の一部が共局在していること、また、AG配列に富む一部のイントロンが含まれていることが分かった。さらにこの結果を細胞生物学的に検証するために、これら新規パラスペックル構成成分RNAの局在を超解像顕微鏡を用いて観察した。その結果、これらのRNAはパラスペックルの外周のリング部分に局在していることが明らかとなった。これらの結果から、パラスペックルが単なるタンパク質やRNAの集合体ではなく、規則正しい構造を通して核内プロセスを制御していることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
超解像顕微鏡による核内構造体観察により、予想もしなかったパラスペックルの構造を明らかにすることができた。また、アンチセンスオリゴによる核内RNA-タンパク質複合体の精製も順調に進んでいる。
超解像顕微鏡を用いたパラスペックルの微細構造観察が順調に進んでいるので、さらに多くの構成成分の局在を明らかにするとともに、各種構成成分を欠損した際、パラスペックルの微細構造がどのように変化するかについても詳細な検討を行う。また、RNAの領域特異的な精製を行い、異なるタンパク質が精製されるかどうかについても検討してゆく予定である。新学術領域の他の公募班や計画班の研究者の超解像顕微鏡観察の技術支援も行ってゆく。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 6件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 4件)
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