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2016 年度 実績報告書

ネオタクソノミに応じたncRNAの生理機能の解明

計画研究

研究領域ノンコーディングRNAネオタクソノミ
研究課題/領域番号 26113005
研究機関北海道大学

研究代表者

中川 真一  北海道大学, 薬学研究院, 教授 (50324679)

研究期間 (年度) 2014-07-10 – 2019-03-31
キーワード長鎖ノンコーディングRNA / Neat1 / パラスペックル
研究実績の概要

Neat1は核内構造体パラスペックルの骨格となっている長鎖ノンコーディングRNAであり、長さが約3 kbのNeat1_1と、20 kbのNeat1_2の二つのアイソフォームが存在する。どちらのアイソフォームもパラスペックルに局在するものの、この構造体の骨格としての機能を持つのはNeat1_2のみであり、Neat1_1のみを発現する細胞ではパラスペックル形成が見られないことがわかっている。多くの培養細胞はNeat1_1とNea1_2の両方のアイソフォームを発現しており恒常的にパラスペックル形成が見られるが、マウスの生体組織の多くは、Neat1_2はごく少量しか発現しておらず、Neat1_1のみが発現しているため、パラスペックルは形成されない。従って、マウス組織においてはNeat1_1とNeat1_2のアイソフォームの切り替えを行うことでパラスペックル形成を制御していると考えられる。このアイソフォーム切り替えの生理的な意義を明らかにするために、Neat1_1の生成に必要な選択的poly-A付加シグナルを欠失するマウス個体を、CRISPR-Cas9のシステムを用いて作製した。その結果、このマウスではコントロールの野生型マウスに比べてNeat1_2の発現が著しく上昇し、肝臓、唾液腺、小腸をはじめとする各組織でパラスペックルの過剰形成が起きていることが明らかとなった。
Neat1のKOマウスのメスは妊孕性の低下という表現型を示すものの、オス個体は顕著な表現型を示さない。Neat1は特殊な環境下で機能を発揮するという予想のもと、Neat1のKOマウス及び野生型マウスに高脂肪食を与え、体重の変化を調べた。その結果、Neat1 KOマウスではWTマウスに比べ摂餌量が低下し、体重も増えにくいことが明らかとなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

長鎖ノンコーディングRNAの分子機能を明らかにする上で、単純にその遺伝子全体を欠失した時の表現型解析でなく、タンパク質の機能解析で行われているようなドメイン解析を行うことが、今後重要な課題であると考えられている。今回、我々は、Neat1のアイソフォームの発現変化が個体レベルでどのような影響を与えるかを調べることのできるモデルマウスの作製に成功した。来年度以降、このノックアウトマウスの表現型解析を行うことで、Neat1のアイソフォームの違い、Neat1_2特異的な領域の生理機能を明らかにすることができると考えられる。
また、Neat1のノックアウトマウスに高脂肪食を与えることで、野生型マウスに比べて体重が増えにくくなることが明らかとなりつつある。これまで、Neat1は特定の環境下で生理機能を発揮することが示唆されていたが、具体的にどのような環境下で機能を発揮するのかについての知見はごく限られていた。今回、高脂肪食摂取時にのみ見られる表現型が明らかになったことで、Neat1の分子機能を解析するための大きな手がかりを得ることができた。

今後の研究の推進方策

これまでに作成したNeat1_1ポリA付加シグナル欠損マウスでは、恒常的なNeat1_2の発現が誘導され、結果としてパラスペックル過剰形成が起きていることが分かっている。さらに、予備的な観察によれば、通常はNeat1_1のみを発現している唾液腺の大きさが、顕著に増大することが明らかとなってきた。そこで、異所的なパラスペックル形成によって唾液腺の細胞で引き起こされる遺伝子発現の変化を解析するほか、パラスペックル・Neat1が相互作用する分子を同定することによって、この表現型を生み出す分子メカニズムを明らかにする。また、Neat1のノックアウトマウスで見られた高脂肪食摂取時における表現型を生み出すメカニズムを明らかにするために、脂肪代謝に関わる脂肪組織、肝臓などから得られたRNAを用いてトランスクリプトーム解析を行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2017 2016 その他

すべて 国際共同研究 (5件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 5件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 3件、 謝辞記載あり 2件)

  • [国際共同研究] University of Illinois Urbana/Harvad Medical School(米国)

    • 国名
      米国
    • 外国機関名
      University of Illinois Urbana/Harvad Medical School
  • [国際共同研究] Chinese University of Hong Kong(China)

    • 国名
      中国
    • 外国機関名
      Chinese University of Hong Kong
  • [国際共同研究] University of Oxford(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University of Oxford
  • [国際共同研究] The University of Western Australia(Australia)

    • 国名
      オーストラリア
    • 外国機関名
      The University of Western Australia
  • [国際共同研究] VIB(Belgium)

    • 国名
      ベルギー
    • 外国機関名
      VIB
  • [雑誌論文] Malat1 regulates myogenic differentiation and muscle regeneration through modulating MyoD transcriptional activity.2017

    • 著者名/発表者名
      Chen X, He L, Zhao Y, Li Y, Zhang S, Sun K, So K, Chen F, Zhou L, Lu L, Wang L, Zhu X, Bao X, Esteban MA, Nakagawa S, Prasanth KV, Wu Z, Sun H, Wang H.
    • 雑誌名

      Cell Discov

      巻: in press ページ: in press

    • DOI

      10.1038/celldisc.2017.2

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] p53 induces formation of NEAT1 lncRNA-containing paraspeckles that modulate replication stress response and chemosensitivity.2016

    • 著者名/発表者名
      Adriaens C, Standaert L, Barra J, Latil M, Verfaillie A, Kalev P, Boeckx B, Wijnhoven PW, Radaelli E, Vermi W, Leucci E, Lapouge G, Beck B, van den Oord J, Nakagawa S, Hirose T, Sablina AA, Lambrechts D, Aerts S, Blanpain C, Marine JC.
    • 雑誌名

      Nat Med

      巻: 22 ページ: 861-868

    • DOI

      10.15252/embj.201695848

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Control of Chromosomal Localization of Xist by hnRNP U Family Molecules.2016

    • 著者名/発表者名
      Sakaguchi T, Hasegawa Y, Brockdorff N, Tsutsui K, Tsutsui KM, Sado T, Nakagawa S.
    • 雑誌名

      Dev Cell

      巻: 39 ページ: 11-12

    • DOI

      10.1016/j.devcel.2016.09.022

    • 査読あり / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Structural, super-resolution microscopy analysis of paraspeckle nuclear body organization.2016

    • 著者名/発表者名
      West JA, Mito M, Kurosaka S, Takumi T, Tanegashima C, Chujo T, Yanaka K, Kingston RE, Hirose T, Bond C, Fox A, Nakagawa S.
    • 雑誌名

      J Cell Biol

      巻: 214 ページ: 817-830

    • DOI

      10.1083/jcb.201601071

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Natural antisense RNA promotes 3' end processing and maturation of MALAT1 lncRNA.2016

    • 著者名/発表者名
      Zong X, Nakagawa S, Freier SM, Fei J, Ha T, Prasanth SG, Prasanth KV.
    • 雑誌名

      Nucleic Acids Res

      巻: 44 ページ: 2898-2908

    • DOI

      10.1093/nar/gkw047

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2018-01-16   更新日: 2022-01-31  

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