研究領域 | ノンコーディングRNAネオタクソノミ |
研究課題/領域番号 |
26113006
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研究機関 | 神戸大学 |
研究代表者 |
影山 裕二 神戸大学, 遺伝子実験センター, 准教授 (90335480)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | ショウジョウバエ / 中枢神経系 / キノコ体 / ノンコーディングRNA / エピジェネティックな遺伝子発現制御 |
研究実績の概要 |
今年度は以下の結果を得た。 a) 脚成虫原基の形態形成を指標に、lobe-less 遺伝子とクロマチン再構成複合体 PRC1 のサブユニットをコードする遺伝子との相互作用を解析し、Polycomb および Posterior sex combs 遺伝子を同定した。Polycomb あるいは Posterior sex comb 遺伝子の単独の変異のみを持つ個体は、中脚から前脚への穏やかなホメオティックトランスフォーメーションが観察されるが、その遺伝学的浸透度は 10%以下である。また、lobe-less 単独の変異のみを持つ個体は中脚に異常を示さない。一方、lobe-less とこれら遺伝子の 二重変異体においては、ほぼ完全な中脚のトランスフォーメーションが起こり、遺伝学的浸透度も 5%まで上昇した。これらの結果は Lobe-l ess RNA と PRC1 が遺伝学的に強く相互作用していると解釈され、これらの因子が細胞内で強調的に働いていることを強く示唆するものである。 b )超解像顕微鏡を用いた観察から、Lobe-less RNA が核内に特異的に局在しており、核内では多数のドット上の 構造を形成していることが明らかとなった。 c) ショウジョウバエ近縁種のゲノム配列の比較により、系統学的に非常に近い種においては lobe-less 遺伝子と思われる保存性の高い領域が存在するものの、通常のタンパク質遺伝子に比べると非常に進化速度が速いことが 明らかとなった。また、特に保存性の高い領域が 5 箇所存在し、それ以外の領域の保存性が極めて低いことが明 らかとなった。これらの配列はショウジョウバエ属のみに見られることから、Lobe-less RNA がタクソン特異的な機能を担っている可能性が示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画には以下の項目が挙げられている。 (1) ショウジョウバエ Lobe-less RNA と遺伝学的に相互作用する因子のスクリーニング (2) Lobe-less RNA と物理的に相互作用する因子の同定 (3) Lobe-less RNA の作動エレメントの同定 (4) 高次神経機能を制御する lncRNA タクソンの確立 このうち、(1), (3) については順調に進行しており、最も難航すると予想された(2)については、(1) で得られた結果に基づいてさらなる解析が必要である。現時点で Lobe-less RNA が核内で特異的な局在を示すことが明らかとなっており、この局在を指標とした研究の展開にも期待したい。(3) に関しては、Lobe-less RNA が進化的に保存された配列を含むことを明らかにしており、この RNA 配列の機能を明らかにすることで、飛躍的な進展を遂げる可能性がある。以上の状況から、本研究はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
当初の研究計画のうち、「(2) Lobe-less RNA と物理的に相互作用する因子の同定」、「(3) Lobe-less RNA の作動エレメントの同定」、「(4) 高次神経機能を制御する lncRNA タクソンの確立」を中心に研究を推進する予定である。28年度は以下の研究を行う予定である。 (a) lobe-less 変異系統の遺伝子発現プロファイル解析 (b) Lobe-less RNA に含まれる進化的に保存されたRNA配列を欠損させたトランスジーンの解析 (c) Polycomb タンパク質に対する特異抗体を用いた免疫沈降法による Lobe-less 複合体の解析
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