計画研究
トランスクリプトーム解析により、真核生物では膨大な数の長鎖ノンコーディングRNA(long noncoding RNA: lncRNA)が存在することが明らかにされている。これらのlncRNAのほとんどは機能未知のRNA分子であり、現在でもその体系的な理解はほとんど進んでいない。本研究の目的は、中枢神経系に発現するlncRNAの詳細な解析を行うことで、中枢神経系で機能するRNAの「作動エレメント」を同定し、高次神経機能を制御するncRNAタクソンを確立することにある。これを踏まえ、今年度は以下の研究を行った。前年度までに、ショウジョウバエ近縁種のゲノム配列の比較により、lobe-less遺伝子には近縁種間で特に保存性の高い領域(conserved region:CR)が5箇所存在し、それ以外の領域の保存性が極めて低いことが明らかにしている。そこで上記のCR領域について、5箇所の領域のみを含むトランスジーン(lol-CR)および5箇所全てを欠損しているトランスジーン(lol-ΔCR)を発現する系統を作成してlol変異系統に導入し、表現型の回復を指標とした解析を行ったところ、lol-CRにはほとんど活性が見られず、またlol-ΔCRは野生型lol全長を含むトランスジーン(lol-FL)と同等の活性を保持していた。これらの結果から、lolの遺伝子活性には少なくともCR領域のみでは不十分であることが明らかになった。次にlol遺伝子の転写領域を約1kbの4つの領域に分断し、それぞれの領域を欠損したトランスジーン(lol-Δ1~Δ4)を作成して同様の解析を行ったところ、lol-Δ2のみが遺伝子活性の減少を示した。今後はこの領域について詳細な解析を行うことにより、LOL RNAの活性を担う作動エレメントを同定することが可能になると期待される。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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Nat. Commun.
巻: 9 ページ: 5123
10.1038/s41467-018-07569-0