当該年度は、以下の4つの課題について、ncRNAの機能とその分類の観点から研究を遂行した。(1)関節に特異的なマイクロRNAであるmiR-140とそのホスト遺伝子であるユビキチン酵素をコードするWWP2のそれぞれのノックアウトマウスの解析から、発生・発達期の骨格形成においてはmiR-140の欠損のみがフェノタイプを生じ、その後の組織恒常性維持においては、miR-140とWWP2の両方が軟骨を保護する機能をもつことを見出し、WWP2mRNAの関節内導入が関節炎の治療戦略となる可能性を明らかにした。(2)炎症時に発現するncRNAを同定、この機能をノックアウトマウスを用いた個体レベルでの機能解析も含め進めることで、ncRNAによる炎症制御機構の新たな分子機構の一端を解明した。これにより、ncRNAの新たな機能とそのメカニズムを見出した。(3)オリジナルで構築した全長cDNA(ヒト)5000種が組み込まれているルシフェラーゼレポーターライブラリーを活用し、炎症に関与するマイクロRNAやRNA結合タンパクの新規ターゲット遺伝子の解析を行い、あらたなターゲット候補を同定した。(4)GFPライブラリーとハイコンテンツ顕微鏡システムを組み合わせて用いることで、炎症刺激下・ヒートショック刺激下における細胞内挙動について、特にRNA結合タンパクについてデータを取得、それらの刺激前後においての分子挙動を詳細に解析し、分類した。その中から、今まで報告されていない興味深い分子局在について、その機能と結合するRNAとの関係について研究を行った。
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