研究領域 | 細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム |
研究課題/領域番号 |
26114002
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
井垣 達吏 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (00467648)
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研究分担者 |
高松 敦子 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (20322670)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 細胞競合 / 細胞間相互作用 / がん / ショウジョウバエ / 遺伝学 |
研究実績の概要 |
細胞競合とは、同種の細胞間で相対的に適応度の高い細胞 (勝者) が低い細胞 (敗者) を積極的に排除する「適者選択システム」であり、正常発生における動的な組織構築過程や上皮に生じた前がん細胞の排除など、多様な生命現象に関わることが示されつつある。細胞競合研究の萌芽期にある今、細胞競合の全貌解明を目指すには、まずその制御因子と特異的マーカー分子を網羅的に単離・同定し、それらの役割と動作機序を明らかにすることが必須である。そこで本研究では、ショウジョウバエ上皮細胞競合モデルを用いて細胞競合制御因子群を網羅的に同定し、その役割と分子機序を遺伝学的に明らかにする。具体的には、研究代表者が独自に開発したショウジョウバエ上皮細胞競合スクリーニング系(上皮に誘導した極性崩壊細胞(敗者)に近接する正常細胞(勝者)にEMS誘導性突然変異を導入し、両者間の細胞競合機構に異常をきたす突然変異体を探索する)を大規模に展開し、上皮細胞競合の制御因子を網羅的に同定する。平成26年度は、これまでのパイロットスクリーニングに加えて1700系統の突然変異系統を樹立してスクリーニングを行い、近接する極性崩壊細胞を排除することができないelimination-defective (eld) 変異系統4系統を単離することに成功した。さらに、これら4つのeld変異系統のうち3系統はパイロットスクリーニングで単離したeld-4と同じcomplementation group(同一の責任遺伝子をもつ)に属することが分かった。eld-4についてはその責任遺伝子として細胞膜リガンドタンパク質を同定し、さらにRNAiスクリーニングによってその受容体候補タンパク質の同定にも成功した。一方、単独のcomplementation groupに属するeld-5の責任遺伝子領域の絞り込みを、一連の染色体欠失系統を用いて行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は、ショウジョウバエ上皮細胞競合モデルを用いて細胞競合制御因子の網羅的な遺伝学的探索を行い、これにより単離・同定された分子群の細胞競合における役割と動作機序を明らかにしようとするものである。これまでの本研究により、細胞極性の崩壊により細胞競合の敗者となって排除される細胞(極性崩壊細胞)を排除できない「elimination-defective」変異系統を8系統単離し、そのうち1つのcomplementation group(4系統が属する)についてはその責任遺伝子として細胞膜上に局在するリガンド様タンパク質を同定した。さらに、このリガンド様タンパク質の細胞外ドメインに着目したRNAiスクリーニングを行い、リガンド様タンパク質の受容体候補タンパク質の同定にも成功した。以上の経過から、本研究はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、本スクリーニングにより同定されたリガンドー受容体分子の細胞競合における役割と動作機序を遺伝学および免疫組織化学的手法により解析していくとともに、受容体の下流で機能するシグナル経路を明らかにし、勝者細胞が敗者細胞を認識し排除するメカニズムを明らかにしていく。また、eld-5の責任遺伝子の同定・解析を進めていく。一方、遺伝学的スクリーニングをさらに大規模に展開し、細胞競合制御因子の網羅的単離・同定を進めていく。
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