研究領域 | 細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム |
研究課題/領域番号 |
26114004
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
西田 栄介 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (60143369)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 上皮組織 / 遺伝子導入法 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
本研究は、腸上皮組織における細胞競合の分子機構の解明を目指すものである。適応度の低い細胞が腸上皮の管腔側(アピカル側)に脱落するプロセスについて、腸上皮組織における脱落を誘起するシグナル伝達機構と腸上皮層からの脱落メカニズムの二つの分子メカニズムを明らかにしていく。 i) 脱落を誘起するシグナル伝達機構 細胞競合に関わる可能性のある因子のノックダウンを行い、細胞脱落への影響を解析するために、腸上皮組織において簡易に遺伝子ノックダウンする手法を開発し改良した。本方法は、複数の遺伝子の導入並びに複数の遺伝子のノックダウンを同時に行うことが可能であり、本研究を進める上で非常に有利な手法となる。また、個体から単離した腸上皮は、適切な培養条件下でオルガノイドとして培養できることが最近報告されたが、この培養系を用いた細胞競合のアッセイ方法の構築を行った。 ii) 腸上皮層からの脱落メカニズム 細胞が腸上皮層から脱落する過程で、周囲の細胞がそれらの細胞をアクチン・ミオシンリングによって積極的に排除することが分かってきた。また最近の研究によって、勝者細胞は隣接する敗者細胞の存在を認識し、細胞骨格タンパク質フィラミンや中間径フィラメントを敗者細胞との境界に集積させることによってそれらの細胞のアピカル側への排除を促進していることが明らかになった。敗者細胞内でも、CDC42やミオシンの活性化、WAVEの細胞局在変化、VASPのリン酸化亢進などの様々な変化が起こることも分かってきた。これらの分子の局在を明らかにするにあたり、腸上皮組織における細胞の脱落を免疫組織学的手法により観察する手法の改良を行った。また、これらの細胞競合の実行因子の脱落現象への関与を明らかにするための遺伝子導入法について検討し、予備的実験を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
腸上皮組織において、細胞競合の生理的意義やその分子機構を解析するための独自の手法として、新たな遺伝子導入並びに遺伝子ノックダウン法を開発し改良することが出来た。その事により、極めて簡便かつ迅速に細胞競合に関与しうる遺伝子の同定並びにその機能解析を行う途を開くことができた。また、細胞競合が関与すると考えられる細胞脱落を測定する方法も確立することが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
我々が開発したin vivoでの腸上皮組織への遺伝子導入法のさらなる改良を行いつつ、細胞競合に重要な働きをすることが報告されている遺伝子の過剰発現やノックダウンを行い、生体内における腸上皮での細胞競合の分子レベルでの理解を目指す。具体的には、(i) 脱落を誘起するシグナル伝達機構については、ショウジョウバエの系で細胞競合における重要性が明らかになっているJNK経路やHippo経路の因子を遺伝子操作することによって腸上皮にどのような影響がもたらされるかを解析する。さらに、複数の遺伝子の導入並びに複数の遺伝子のノックダウンを同時に行うことが可能であるという特徴を活かして、シグナル伝達経路のクロストークについても検討する。(ii) 腸上皮層からの脱落メカニズムについては、周囲の細胞が脱落する細胞をアクチン・ミオシンリングによって積極的に排除することが分かってきており、最近では、Filamin AやVimentinが重要な役割を果たすことが明らかになってきている。これらの因子が腸上皮の脱落において、どのような役割を果たしているかを腸上皮組織へのin vivo遺伝子導入法を用いることで解析する。 また、前年度において、我々は腸上皮組織における細胞の脱落を免疫組織学的手法により観察する方法の検討を行い、適切な観察条件を見出しつつある。そこで、今年度は、腸上皮における細胞の脱落を解析する方法を確立し、種々の因子の発現を遺伝子操作した際に起こる腸上皮組織への影響を免疫組織学的手法により解析する。 前年度に行った腸上皮のオルガノイド培養法によるアッセイ系の構築を今年度においても進める。
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