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2015 年度 実績報告書

正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の分子メカニズムの解明

計画研究

研究領域細胞競合:細胞社会を支える適者生存システム
研究課題/領域番号 26114008
研究機関北海道大学

研究代表者

藤田 恭之  北海道大学, 遺伝子病制御研究所, 教授 (50580974)

研究分担者 伊藤 俊樹  神戸大学, バイオシグナル研究センター, 教授 (30313092)
研究期間 (年度) 2014-07-10 – 2019-03-31
キーワード細胞競合
研究実績の概要

本研究は新学術領域班において、正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の分子メカニズムの解明を担当し、異なる細胞間の境界で特異的に機能する分子群を様々な手法にて同定・解析することを大きな目的としている。さらに、申請者が確立した細胞競合マウスモデルシステムを用いて、スクリーニングで同定された分子の機能を解析することを目指している。特に、本研究では正常上皮細胞に隣接する変異細胞側に生じる細胞非自律的な変化に焦点を当てて解析を進めている。平成27年度は変異細胞に生じる2つのプロセスについて大きく研究が進展した。
まず、正常上皮細胞に囲まれたRas変異細胞において、Rab5が細胞非自律的に集積し、またクラスリン依存性エンドサイトーシスが亢進していることを見出した。さらに、この変異細胞におけるエンドサイトーシスの亢進が、変異細胞の上皮細胞層からの排除に重要な働きを果たしていることが分かった。それに加えて、正常上皮細胞との細胞間接着部位においてE-カドヘリンのエンドサイトーシスが亢進していること、エンドサイトーシスの亢進が変異細胞内における細胞骨格タンパク質EPLINの集積を誘起していることも明らかにした。これらの知見については現在PNAS誌においてリバイス中である。
さらに、正常上皮細胞に囲まれたRas変異細胞において、ミトコンドリアの活性低下と解糖経路の活性化が生じていることが分かった。またミトコンドリアの活性低下はPDKの発現上昇によってもたらされていることを突き止めた。さらに、PDK阻害剤の添加によって、Ras変異細胞の上皮層からの排除が抑制されることが明らかになった。これらのデータは、がんの超初期段階においてWarburg効果様の代謝変化が生じ、またその発生に細胞競合が関与していることを示している。これらの知見については、現在Nature誌においてリバイス中である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

本研究では、正常上皮細胞に囲まれた変異細胞内において生じる細胞非自律的な変化の解明を目指すものである。これまでに研究は当初の計画を越え、順調に進展している。平成26年度にEPLINとVASPという二つの重要な制御因子を同定し、それぞれについて論文で発表した(Anton et al., 2014, JCS; Ohoka et al., 2015, JCS)。さらに、平成27年度は、エンドサイトーシスと代謝変化という二つの細胞プロセスが細胞競合に関与することを突き止め、それぞれ一流誌に論文誌バイス中である(Saitoh et al., PNAS; Kon et al., Nature)。さらに、スクリーニングによって複数の分子の同定に成功しており、これらの機能解析によって正常細胞と変異細胞間に生じる細胞競合の全貌が明らかになることが大いに期待できる。また、最近新たにマウス体内の様々な上皮組織にがん原性の変異をタモキシフェン投与によってモザイク様に誘導することのできる新たな細胞競合マウスモデルを開発することに成功した。このように研究は順調に進展しており、これからの3年間の研究発展が大いに期待できる。

今後の研究の推進方策

平成27年度に明らかにしたエンドサイトーシスとWarburg効果様の代謝変化については、その上流及び下流で機能する分子群の同定・機能解析を進めていく。また、さまざまなスクリーニングをさらに継続するとともに、これまでのスクリーニングで同定した分子については、その機能解析を哺乳類培養細胞系とマウスモデルを用いて推進していく。さらに、最近確立した新規細胞競合マウスモデルを用いて、細胞競合がどのようにがん化に関与しているかを詳細に調べていく。
また研究分担者とともに、正常上皮細胞と変異細胞間に生じる細胞競合への脂質の関与についても研究を進めていく。

  • 研究成果

    (14件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件) (うち国際学会 5件、 招待講演 6件) 備考 (1件) 産業財産権 (1件)

  • [国際共同研究] University College London(英国)

    • 国名
      英国
    • 外国機関名
      University College London
  • [国際共同研究] University of Bern(スイス)

    • 国名
      スイス
    • 外国機関名
      University of Bern
  • [雑誌論文] A role of the sphingosine-1-phosphate (S1P)- S1P receptor 2 pathway in Epithelial Defense Against Cancer (EDAC)2015

    • 著者名/発表者名
      Yamamoto, S., Yako, Y., Fujioka, Y., Kajita, M., Kameyama, T., Kon, S., Ishikawa, S., Ohba, Y., Ohno, Y., Kihara, A., and Fujita, Y.
    • 雑誌名

      Molecular Biology of the Cell

      巻: 27(3) ページ: 491-499

    • DOI

      10.1091/mbc.E15-03-0161

    • 査読あり
  • [雑誌論文] The cell competition-based high-throughput screening identifies small compounds that promote the elimination of RasV12-transformed cells from epithelia.2015

    • 著者名/発表者名
      Yamauchi, H., Matsumaru, T., Morita, T., Ishikawa, S., Maenaka, K., Takigawa, I., Semba, K., Kon, S. and Fujita, Y.
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 5 ページ: 15336

    • DOI

      10.1038/srep15336

    • 査読あり
  • [雑誌論文] EDAC: Epithelial defence against cancer- cell competition between normal and transformed epithelial cells in mammals.2015

    • 著者名/発表者名
      Kajita, M. and Fujita, Y.
    • 雑誌名

      Journal of Biochemistry

      巻: 158(1) ページ: 15-23

    • DOI

      10.1093/jb/mvv050

    • 査読あり
  • [学会発表] Competitve interactions between normal and transformed epithelial cells2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第38回日本分子生物学会年会 第88回日本生化学会大会 合同大会
    • 発表場所
      神戸国際会議場(神戸市、兵庫県)
    • 年月日
      2015-12-01 – 2015-12-04
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] EDAC(Epitherial Defence Against Cancer)2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第74回日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋国際会議場(名古屋市、愛知県)
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Cell Competition and Warburg effect2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第1回国際シンポジウム Cell Competition in Development and Cancer
    • 発表場所
      京都大学(京都市、京都府)
    • 年月日
      2015-09-10
    • 国際学会
  • [学会発表] EDAC(Epitherial Defence Against Cancer)2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第33回日本ヒト細胞学会学術集会
    • 発表場所
      ホテルスカイタワー(宮崎市、宮崎県)
    • 年月日
      2015-08-22 – 2015-08-23
    • 招待講演
  • [学会発表] 細胞競合とWarburg effect2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第3回がんと代謝研究会
    • 発表場所
      石川県立音楽堂(金沢市、石川県)
    • 年月日
      2015-07-16 – 2015-07-17
    • 招待講演
  • [学会発表] EDAC(Epitherial Defence Against Cancer)2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      第67回日本細胞生物学会
    • 発表場所
      タワーホール船堀(江戸川区、東京都)
    • 年月日
      2015-06-29 – 2015-07-02
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Cell to Cell competition: survival of the fittest as a system of a cellular society2015

    • 著者名/発表者名
      藤田 恭之
    • 学会等名
      RISK-IR MEETING「Integration and Conceptual Framework Meeting」
    • 発表場所
      BIOPARK、パリ、フランス
    • 年月日
      2015-04-27 – 2015-04-28
    • 国際学会 / 招待講演
  • [備考] 北海道大学 遺伝子病制御研究所 分子腫瘍分野

    • URL

      http://www.igm.hokudai.ac.jp/oncology/index.html

  • [産業財産権] トランスジェニック非ヒト哺乳動物及び該動物を用いたがん治療薬のスクリーニング法2016

    • 発明者名
      藤田 恭之
    • 権利者名
      藤田 恭之
    • 産業財産権種類
      特許
    • 産業財産権番号
      特願2016-54719
    • 出願年月日
      2016-03-18

URL: 

公開日: 2017-01-06   更新日: 2022-02-07  

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