計画研究
加齢造血幹細胞のエピゲノム特性解析を継続して行った。若齢(10週)と加齢(20ヶ月)マウスの造血幹細胞 (Y_HSC, A_HSC) と多能性前駆細胞 (MPP1-4) を用いて、オープンクロマチン領域解析 (Assay for Transposase-Accessible Chromatin Sequencing:ATAC-seq) を行った結果、加齢造血幹細胞においては、造血幹細胞特異的な転写因子群(HoxA9, ERGなど)の結合配列を有するクロマチン領域が閉鎖傾向にあること、酸化・親電子性ストレスで活性化する転写因子NRF2の結合配列を有するクロマチン領域が開放状態にあり、NRF2の標的遺伝子の発現も上昇傾向にあることを見出した。これらの知見は、加齢に伴い幹細胞性が低下するとともに、より酸化・親電子性ストレスに曝露されていることを示しており、加齢造血幹細胞の機能低下の一因と考えられる。一方で、リンパ球に分化指向性を持つ多能性前駆細胞MPP4において、ETSとIRFファミリー転写因子の結合配列を有するクロマチン領域が有意に開放状態にあることが明らかとなり、協調して骨髄球分化誘導に関わるこれらの転写因子の活性化が、加齢造血幹細胞におけるリンパ球の産生能の低下に関わる可能性がある。また、加齢造血幹細胞 (Aged) を、骨髄ニッチを障害することなく前処置なしで若齢マウスに移植したところ、若齢骨髄ニッチに生着した加齢造血幹細胞 (Aged/Y) の遺伝子発現プロファイルが、大幅に若齢造血幹細胞 (Young) 様に回復することを見出した。この知見は、加齢造血幹細胞の遺伝子発現変化が加齢に伴うニッチ変化に強く依存することを示している。以上の知見を基盤に、今後も造血幹細胞エイジングを規定するエピジェネティック機構の統合的な理解を目指していきたい。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 2件、 査読あり 5件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 4件、 招待講演 5件) 備考 (1件)
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