研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
26115003
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研究機関 | 東京医科歯科大学 |
研究代表者 |
西村 栄美 東京医科歯科大学, 難治疾患研究所, 教授 (70396331)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 色素幹細胞 / メラノーマ / 加齢 / 老化 / 幹細胞 / ストレス |
研究実績の概要 |
皮膚のメラノーマは、一般に表皮内の色素細胞に由来すると考えられているが、起源の詳細は明らかにされていない。我々は、マウスやヒトの毛包内に色素幹細胞を見出し、加齢やストレスにより色素幹細胞が未分化性を失って枯渇すると、色素細胞が不足し白髪を発症することを明らかにしてきたが、頭皮におけるメラノーマ発生頻度は低い。本邦では、メラノーマ症例の約半数が掌蹠に発生し、面積あたりの頻度では掌蹠以外の皮膚の約16倍に相当する。近年、ダーモスコピーで掌蹠に皮丘平行パターンが見られた際に99%の特異性でメラノーマと診断されることが示されているが、そもそも色素幹細胞が掌蹠に存在するのかどうか明らかではなかった。我々は、ヒトのメラノーマ細胞が汗腺の存在する皮丘に親和性を示しながら増殖することに着目し、若齢マウスのfootpad内の汗腺に着目して解析した結果、未知の未熟な色素細胞集団が汗腺分泌部に存在しており、加齢やストレスに伴って一過性に自己複製し、メラニンを産生する色素細胞を生み出し、汗管を経て表皮に分化細胞を供給するようになることを見出した。これら汗腺内の色素幹細胞が、メラノーマのオリジンとなりうるのかどうか明らかにするためにヒトの初期メラノーマの組織を解析し,マウスの色素幹細胞様の未熟で静止期にある細胞がマウスと同じく汗腺分泌部に局在しており,初期メラノーマでは同部で増殖が見られること,さらに初期メラノーマでみつかるCyclinD1遺伝子の増幅を同部において認めることを見出した。以上の結果から,汗腺分泌部内にはじめて見出した色素幹細胞が,メラノーマのオリジンとなりうる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題においては,色素幹細胞における老化ストレスと制御機構の解明をめざすものであるが,そのアプローチのなかで我々は毛包だけではなく汗腺内にも色素幹細胞が存在することをはじめて見出し、加齢に伴って分化した細胞を供給しやすくなる現象やメラノーマでは増殖像や癌遺伝子の増幅が見られることを見出し,さらにメラノーマのオリジンとなりうる可能性まで示すことが出来,想定以上の成果を挙げることが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,当初予定していた毛包内に加えて汗腺内の色素幹細胞とそのニッチに着目し,それぞれの老化ストレスシグナルの同定と幹細胞運命の制御について類似点と相違に着目して研究をすすめていく。癌の発生の最初期段階が,幹細胞システムのどのような契機によっておこってくるのか明らかにし,診断や治療へと役立てて行く予定である。
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