計画研究
生後3週、5、6週、10週以後のα-klotho KO マウス、野生型マウスの皮膚、小腸、海馬の幹細胞マーカーの発現、BrdUの取り込み、腎臓、肺、肝臓などでのKi67陽性細胞数の解析を進め、α-klotho の欠失が幹細胞の増殖、分化に与える影響を解析した。生後3週ではα-klotho KO マウス、野生型マウス間で顕著な差異は見いだされないが、生後4、5週ではα-klotho KO マウスにおいて幹細胞数が増加しており、BrdUを取り込んだ細胞数も野生型より多いことが見いだされたが、10週以後のα-klotho KO マウスでは幹細胞数が顕著に減少していた。おそらく生後3週以降に起こる顕著な組織破壊が一過的な幹細胞の動員/過剰な活性化をもたらすものと推定され、低ビタミンD α-klotho KO マウス(ビタミンD を含まない餌による飼育、活性型ビタミンD 合成酵素遺伝子とα-klotho のダブルノックアウトによりビタミンD が低下したマウス)における幹細胞の増殖、分化の解析を進めている。上記の現象の基盤となる3つの仮説を設定した。第1のα-Klotho がWnt に結合、α-Klotho KO ではWnt による幹細胞の自己複製、分化バランスを維持する機構が破綻し、幹細胞の減少、枯渇をおこすとの仮説は、α-Klotho とWnt の結合が確認されず、また、Wntにおいてα-Klothoが特異的に認識するHNK-1糖鎖修飾が確認されないなど、否定的である。第2は、顕著に亢進したビタミンDが細胞質でVDRに結合し、核内に移行し、p300,CBPに結合し、幹細胞の増殖、分化のバランスを崩すとの仮説であり、これを解析する為にビタミンDの活性化を抑えたモデル動物を準備した。また、第3の仮説であるsirtuin活性の制御に関わるeNAMPTの血清値測定システムの開発を進め、測定を開始した。
2: おおむね順調に進展している
クロトー変異マウスにおける幹細胞の維持、増殖、枯渇に関する基礎情報が集積できた。また、次の解析の為のモデル動物システム、特に成熟後の老化亢進に伴う幹細胞の振る舞いを解析する為のシステムの開発、また、ビタミンD活性の亢進の影響を解析するシステムの開発が進み、次の発展の為の基盤が構築された。eNamptの測定システムが開発され、重要な仮説を解析する道を開いた。よって、概ね順調に進展していると判断している
基本的には申請書の方針通りに研究を進める。特にクロトー変異マウス、初年度に開発した解析モデルシステムを利用して、幹細胞の増殖、分化の制御機構、老化に伴う幹細胞の老化機構の基本的なデータを取得する。申請書に記載した3つの仮説のうち、第1の仮説は否定的であり、第2、第3の仮説を中心に解明を進める。
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Sci Rep.
巻: 4 ページ: 5847 (1-7)
10.1038/srep05847.
PLoS One.
巻: 9 ページ: e86301
PMID: 24466013