計画研究
α-klotho KO マウスの幹細胞マーカーの発現、BrdUの取り込み、腎臓、肺、肝臓などでのKi67陽性細胞数の解析を進め、生後3週ではα-klotho KO マウス、野生型マウス間で顕著な差異は見いだされないが、生後4、5週ではα-klotho KO マウスにおいて幹細胞数が増加しており、BrdUを取り込んだ細胞数も野生型より多いことが見いだされ、しかも10週以後のα-klotho KO マウスでは幹細胞数が顕著に減少していた。おそらく生後3週以降に起こる顕著な組織破壊が一過的な幹細胞の動員/過剰な活性化をもたらすものと推定されたことから、顕著な組織破壊を起こすシグナル経路を解析した。生後3、4週に顕著な組織破壊が起こる。この時期に一致してカルパイン1が顕著に活性化される事から、カルパイン1の阻害剤を投与したところ、組織破壊が止まる事が明らかとなった。ついで、おそらく免疫系の細胞障害活性がα-klotho KOの組織破壊表現型に関わると推定し、解析の結果、血中CCL11/エオタキシン濃度が顕著に増加していた。また、顕著な組織破壊が起こる肺などではグランザイム陽性細胞が多数観察された。エオタキシンは好酸球に特異的に発現するCCR3の特異的リガンドとしてアレルギー性炎症の特徴である選択的好酸球集積、気道への好酸球集積に寄与している。更にエオタキシンの血中濃度は老化に伴って増加し、海馬における神経細胞の新生を低下させることが報告されており、α-klotho KOにおける血中エオタキシン濃度の増加は、α-klotho KOにおける組織破壊の重要な要因と推定している。なお、顕著に増加しているビタミンD活性シグナルが肝臓において一連の核内受容体制御遺伝子の発現、機能制御に関わり、脂質/胆汁酸代謝、糖代謝の制御に予期せぬ変異をもたらす事を発見し、その詳細を解析中である。
2: おおむね順調に進展している
顕著な細胞障害を特徴とするα-klotho KOの変異表現型の要因としてカルパイン1の活性化、血中エオタキシンの亢進が見いだし、組織破壊メカニズムの理解が進んだ。また、顕著に増加しているビタミンD活性シグナルが肝臓において脂質/胆汁酸代謝、糖代謝の制御に予期せぬ変異をもたらす事を発見、また、詳細な解析を実現する為のα-klothoのコンディショナルKOマウスの作製にも成功しており、引き続き新たな展開が展望できる状況にあることから概ね順調と判断した。
エオタキシンの亢進が顕著な組織破壊をもたらす機構、老化の変異表現型、海馬における神経細胞の新生に与える影響を解析する。また、脂質/胆汁酸代謝、糖質代謝の制御にビタミンD受容体を介したシグナルがどのように関わるのかを解析する。α-klothoは視床下部、海馬等で発現しており、特異的ノックアウトマウスの解析により脳におけるα-klothoの機能を解析する。
すべて 2016 2015 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 2件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち招待講演 4件)
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