研究領域 | ステムセルエイジングから解明する疾患原理 |
研究課題/領域番号 |
26115004
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研究機関 | 公益財団法人先端医療振興財団 |
研究代表者 |
鍋島 陽一 公益財団法人先端医療振興財団, その他部局等, その他 (60108024)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 個体老化 / Klotho / 組織障害 / 炎症 / ビタミンD / カルパイン / Rag2 |
研究実績の概要 |
α-klotho KO マウスの腎臓、皮膚、小腸、血管などでは顕著な細胞死、組織破壊が起こっている。顕著な組織破壊が一過的な幹細胞の動員/過剰な活性化、引き続く枯渇をもたらす可能性を検証するためにa-klotho KOマウスにおける組織損傷誘導プロセスを解析した。a-klotho KOマウスではリン、活性型ビタミンD (1,25(OH)2D)、FGF23が顕著に亢進しており、ビタミンD活性の正常化、高リン血症の改善により組織障害は大きく改善する。次の課題は組織破壊の実行部隊の解明であるが KOマウスではCalpain-1の顕著な活性化が生後2週、3週より観察され、次いで生後4週頃より内在性のCalpain-1阻害剤であるカルパスタチンによる分解阻害を乗り越えて細胞障害を引き起こす。この事実と符号するようにKOマウスでは生後4週頃から顕著な組織障害が観察されるようになる。また、Calpain-1阻害剤の投与により多様な組織障害が顕著に改善することを確認した。さらにCalpain1の活性化に関連する因子の探索を行い、組織破壊が激しい肺、腎臓等ではグランザイム、パーフォリン、FasL陽性細胞がコントロールに比して多数観察され、組織障害の現場を捉えることに成功した。活性型ビタミンD、炎症反応の亢進が協同的に作用して腎臓、血管内皮、肺胞細胞、皮膚、小腸などの細胞においてCalpain-1の機能が亢進し、同時に細胞死シグナルが活性化し、組織障害/細胞死をもたらすと推定された。 a-klotho KOマウスとRag2 KOマウスを掛け合わせると組織障害が改善し、メスの寿命が大幅に延長することから、京都大学医学研究科免疫学講座との共同研究を行い、a-Klothが結合する免疫系細胞を同定し、結合相手の同定を進めている。また、脾臓の免疫系細胞の特徴について解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでの4年間で(1)α-klotho KO マウスにおける幹細胞の振る舞いを解析し、組織障害に伴って幹細胞の増殖応答が起こり、引き続いて幹細胞の減少・枯渇が起こることを解明し、α-klotho KO マウスは幹細胞の自己複製と分化のバランス制御を解析する解析する優れたモデル系であることを確認した。(2)細胞・組織破壊の要因として活性型ビタミン D、炎症反応の亢進、Calpain-1、及び細胞死シグナルの活性化を見いだした。(3)α-klotho KO マウスにおける組織障害に免疫系の関与を強く示唆する結果が得られ、その解析が進んでいる。(4)膵臓β細胞の増殖制御機構を解析し、鍵となる遺伝子を同定し、解析中である。よって概ね順調に進んでいると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
1)ケモカイン、グランザイムなどの組織損傷免疫応答がalpha-klotho変異マウスにおいて観察される多様な老化類似症状の発症に関わっていることが明らかとなっている。マクロファージの活性化機構誘導因子の解析、免疫系細胞とalpha-klothoの分子間相互作用の解析などを中心に、老化変異症状の発症に免疫系の変容がどのように関わるかを解析する。京都大学免疫学講座と共同で老化過程における組織損傷免疫応答についての解析を進める。 2)損傷した組織、細胞のスカベンジャーシステムが老化病態に関わる可能性について解析する。また、スカベンジャー機能を有する分子が老化細胞の除去に関わるかを解析する。組織破壊、組織修復のバランス制御の分子機構に関わる新規分子を見出しており、その機能を解明する。 3)5年間の研究結果を取りまとめ、老化症状、個体老化における幹細胞老化の意義について考察し、取りまとめる。
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