計画研究
一日に供給すべき機能細胞の数を一定として、様々な組織構造を数理モデルによって仮想的に構築し、細胞の特性が変化することによる組織破綻の過程を数理学的に解析した。前年度に引き続いて、組織変容に与える細胞分裂/死亡・分化に関わる特定の突然変異の効果を確率シミュレーションによって網羅的に調べた。さらに、確率シミュレーション結果と合わせて、確率過程の数理学的手法を用いた、組織変容までの待ち時間の理論式導出を始めた。これまでの結果では、(1)分化した細胞の分裂回数・集団が大きいと幹細胞における突然変異の蓄積率が小さくなり、がん発症までの待ち時間が長くなること、(2)突然変異必要になる場合においては幹細胞の数が大きい方ががん発症までの待ち時間が短くなることがわかった。理論研究と並行して、腸上皮組織や造血組織といった特定の臓器における恒常性の破綻に関する共同研究も進めた。また、肝臓における肝切除後の体積再生モデル式を構築し、切除率毎の再生データを予測した。その結果、切除時に測定する臨床データを用いて再生する症例を判別する式を導き、交差検定で85%の症例を説明することが出来た。これらの研究の一部として、国際誌であるSci Rep誌 (6:34214)、Cancer Res誌(Accpeted)、国内の専門誌である「実験医学」(Vol. 35 - No.5, 227-230)に論文・総説として発表した。
2: おおむね順調に進展している
計画にあった組織変容の数理モデル解析に関して、モデル構築・網羅的シミュレーション解析を実施し、組織変容機構の原理抽出に向けた結果を出している。その他、実験・臨床研究者との腸上皮組織、造血組織における組織変容の具体的な解析に取りかかっている。これまでの結果を国際誌に2報発表した。
今後はこれまでの組織変容の数理モデルの結果をまとめて普遍的な原理の抽出を目指し、結果を学術論文として発表する。理論研究を具体的な組織構造に当てはめた実証研究も並行して行っていく。特に現在進行中の造血組織、腸上皮組織の発がん過程のモデルを実験データと共に解析し、組織特有のがん発生機構を調べる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件) 図書 (1件)
Cancer Research
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
Scientific Reports
巻: 6 ページ: 34214
10.1038/srep34214