計画研究
正確な遺伝子発現は生命現象の根幹であり、その破綻や異常は様々な疾患の原因となります。細胞の保持する品質管理機構は、異常な遺伝子産物を認識し排除することで遺伝子発現の正確性を保証しています。タンパク質合成途上での翻訳停止は遺伝子産物の機能に重大な欠損を示すため、品質管理機構によって認識され排除される必要があります。研究グループでは、翻訳停止に起因する品質管理機構を世界に先駆けて発見し分子機構の解明を進めてきました。これまでに、特殊な配列を持ったタンパク質合成途上鎖(新生鎖)が翻訳伸長反応を停止させる結果、新生鎖のユビキチン化とプロテアソームによる迅速な分解が起こることを世界に先駆けて報告してきました。この品質管理機構はRibosome Quality Control (RQC)とよばれています。研究代表者は、ユビキチン付加酵素であるRQT1/HEL2が、特異的な翻訳停止状態のリボソームを認識し、リボソームタンパク質の特定の残基をユビキチン化することが、異常翻訳を認識する品質管理機構の普遍的な分子機構であることを以前報告しています。今回、衝突したリボソームが Hel2 による品質管理を誘導する特異的構造を形成することを見出しました。翻訳品質管理の標的となる2つのリボソームが衝突して停滞した構造を、クライオ電顕で解明しました。この研究成果により、細胞の持つ新たな品質管理の仕組みが分子レベルで明らかになるだけでなく、遺伝病の原因となる様々な異常タンパク質の合成を効率的に抑制する治療薬の開発にも貢献する事が期待されます。アルツハイマー病やパーキンソン病、筋萎縮性側索硬化症などの神経変性疾患の主因であるフォールディング異常タンパク質が産生される分子機構は十分理解されていません。今回の研究成果は、これらの疾患の発症機構の理解につながる重要な発見です。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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