計画研究
精神・神経変性疾患モデルの神経細胞の翻訳について、平成30年度はさらなる翻訳解析を行った。その結果、精神障害に広く関わるDISC1が神経細胞の樹状突起における局所翻訳に関わることを見出した。また、その関与が、神経刺激に伴う神経活動に依存したことから、DISC1が神経活動に依存した(特に樹状突起での)翻訳を制御することを新たに見出した。また、その翻訳制御のメカニズムを調べたところ、40SリボソームサブユニットにDISC1が比較的多く存在し、各種翻訳開始因子とも結合すること、翻訳開始を促進させる役割を持つことをリコンビナントタンパク質で再構成したin vitro翻訳実験などから明らかにした。また、認知症や社会性の欠如などの表現型を示す前頭側頭葉変性症(FTLD)のモデルマウスを新たに構築し、そのマウスの翻訳解析を行った。その結果、FTLD原因タンパク質のTDP-43とDISC1が共凝集することによって局所翻訳の機能が低下し、社会性の欠如や過活動などの精神障害をもたらすことを明らかにした。さらにタンパク質の凝集化と精神障害の関係を調べる目的で、オートファジー機能を興奮性または抑制性の神経細胞のみで選択的に欠損させた二種類のマウスを構築した。その結果、両方のマウスが、社会性の欠如や巣作り行動の異常などを含む自閉症様の表現型を示すことを見出した。その分子メカニズムを新規に開発したプロテオミクス手法で調べたところ、翻訳レベルが低下すること、GABA受容体の輸送に関わるGABARAPタンパク質群がp62依存的に凝集することで、細胞表面のGABA受容体が減少し、興奮性・抑制性のバランスが崩れることを分子生物学実験、電気生理実験から見出した。以上から、タンパク質の凝集化は他のタンパク質との共凝集を通して幅広く、精神障害をもたらすことを明らかにした。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
すべて 2019 2018 その他
すべて 国際共同研究 (2件) 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件、 招待講演 3件) 図書 (1件) 備考 (3件)
Sci Adv.
巻: 5 ページ: eaau8237
10.1126/sciadv.aau8237
Proc. Natl. Acad. Sci. U. S. A.
巻: 116 ページ: 8909-8918
10.1073/pnas.1819715116
Biol. Psychiatry
巻: 84 ページ: 509-521
10.1016/j.biopsych.2018.03.008
http://www.riken.jp/pr/press/2018/20180614_1/
http://www.riken.jp/pr/press/2019/20190411_1/
http://www.riken.jp/pr/press/2019/20190426_3/