研究領域 | 新生鎖の生物学 |
研究課題/領域番号 |
26116006
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研究機関 | 奈良先端科学技術大学院大学 |
研究代表者 |
河野 憲二 奈良先端科学技術大学院大学, 研究推進機構, 特任教授 (50142005)
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研究分担者 |
木俣 行雄 奈良先端科学技術大学院大学, バイオサイエンス研究科, 准教授 (60263448)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 蛋白質 / 翻訳休止 / 小胞体ストレス応答 / 新生鎖 |
研究実績の概要 |
本研究は,翻訳休止(ポージング)により起こる,翻訳途上蛋白質とリボソームの品質管理機構,また翻訳レベルでの新生鎖とリボソームの生理機能について明らかにすることを目的とする。モデル蛋白質として,哺乳動物細胞の小胞体ストレス応答に重要なXBP1uの翻訳休止によるXBP1u mRNAの小胞体膜への輸送機構を解明する。小胞体膜への輸送のためには、「疎水性領域(HR2)と翻訳休止配列(PS)の2つが必要であり、翻訳休止時にHR2にシグナル識別粒子(SRP)が結合することが重要であること」が今までの研究で明らかになっている。今回は翻訳休止がどのような機構によるのかについて重点的に解析した。翻訳休止を起こしているXBP1uのPSはリボソームトンネル内にある。光架橋法によりトンネル内のXBP1uと結合しているタンパク質を免疫沈降-質量分析を用いて解析した結果、トンネル内表層に分布していると予想されるリボソームタンパク質としてRPL3, RPL4, RPL7の3つの候補が上がって来た。これらのタンパク質をノックダウンすると翻訳休止しているバンドだけが減ることから、XBP1uがリボソームタンパク質と直接相互作用することにより休止していることが強く示唆された。また翻訳休止を起こしているときにリボソームトンネル内に位置する領域をMal-PEG法により調べたところ、XBP1uのM(260)はP siteに位置し、そこから上流30アミノ酸残基までは完全にトンネル内に、30-40残基部分は一部修飾を受けることから出たり入ったりしている可能性が高いと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
XBP1uは翻訳休止をしている時に、リボソームトンネル内に位置する30-40アミノ酸の領域が、リボソームタンパク質RPL3, RPL4, RPL7などと直接相互作用して翻訳休止を起こしていることが強く示唆される結果を得た。さらに翻訳休止を起こすことが知られている正電荷をもつアミノ酸クラスター(Arg残基が30個連続した領域)の翻訳休止にはRPL39も関っていることが分かったが、XBP1uの翻訳休止にRPL39は関与しないことから、両者の翻訳休止機構は同じではないことが示唆された。また、翻訳休止が起こることにより、HR2領域がSRPに認識されるという新しい機構もわかってきたので、計画は予定通り順調に進んでいると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
XBP1uによる翻訳休止にリボソームタンパク質との相互作用が関わっていることが示唆されたので、その仮説を実証するために、RPL4の点変異を導入し、その変異では通常のタンパク質合成には影響が出ないが、XBP1uの翻訳休止のみが抑制されることを示したい。また、相互作用して翻訳休止が起こるにも関わらず、再び合成が再開する機構は全くわかっていない。ヒト由来の精製した因子でタンパク質合成を行える無細胞翻訳系があるので、その系でXBP1uの翻訳休止と翻訳再開が起こるかどうかを調べる予定である。翻訳再開に翻訳系以外の因子が関わっていれば非常に興味深い。もし翻訳マシナリー以外の因子が必要であるならば、この無細胞系を利用して必要な因子は何なのかを検索する。またHR2配列とPS配列との距離により小胞体膜への挿入が制御されているかどうか、その時のXBP1uの安定性、細胞内の局在などを、種々の変異型XBP1uを作製して調べる予定である。翻訳休止とペプチド鎖伸長因子2(eEF2)との関連も調べる予定である。
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