計画研究
分子内C末端に1つ存在する膜貫通領域により脂質膜にアンカーされるテイルアンカー型タンパク質(TA) は、リボゾームで翻訳された後サイトゾルを介して直接各オルガネラ標的膜へ輸送される。最近の研究により、TAの翻訳後輸送はその局在先によって異なる分子機構を必要とし、TA の運命決定はより上流のリボソームでの新生鎖翻訳段階において品質管理を含めた形で実行されることが示されつつある。しかし、その実態は不明であり喫緊の課題として、本研究では、TAをモデルとした新生鎖の運命決定機構の分子メカニズムの解明を目的とする。H26年度はC末膜貫通ドメインに含まれる局在化シグナルの認識および翻訳速度の調節などの解析の基盤となる実験系の構築を試み、無細胞翻訳系と中性条件下でのSDS-PAGEの組み合わせることで翻訳途上の新生鎖TAの検出が可能となった。また、小胞体局在性TAやペルオキシソーム局在性TAのC末膜貫通領域に疎水性度の変化などを導入した種々のモデルTAを作製し、上記無細胞翻訳系により解析を行ったところ、あるペルオキシソーム局在性TAの翻訳速度が遅延していることを強く示唆する結果を得た。小胞体局在性TAは、翻訳後TRC複合体を介してその標的化因子であるTRC40へ受け渡され、小胞体へ標的化されることが見出されている。In vivoの解析により、ペルオキシソーム局在性TAがBag6を含むTRC複合体による認識を回避して標的化因子であるPex19pと結合することが明らかになりつつある。
2: おおむね順調に進展している
新生鎖TAの運命決定機構の分子メカニズムを解明するための基盤となる、新生鎖TAの翻訳速度解析実験系を構築できた。さらなる条件検討を重ね、本解析系の高感度化や簡略化を進めることにより、様々な翻訳速度や運命決定に関与する候補タンパク質因子群の検討が可能とすべく改善を行っている。また、小胞体局在性TAの輸送に関わるTRC複合体の構成因子など研究材料の調整と整備も進んでいる。
各オルガネラ局在性TA をモデルとして、C末膜貫通ドメインに含まれる局在化シグナルの認識、および翻訳速度の調節や新生鎖のフォールディングを含めたタンパク質の品質保証システムなどの実態解明を目指す。上記無細胞翻訳系に種々のモデルTAを様々な条件で翻訳、発現させ、モデルTAのC末膜貫通領域付近のどのようなアミノ酸配列が選別輸送および品質管理への仕分けに決定的な情報となっているのかを詳細に検討する。また、Bag6を含むTRC複合体やその関連因子の添加、除去などにより、新生鎖TA の認識および翻訳速度調節および品質管理システムにおける役割を明らかにする。またこれらモデルTAを用いた解析は動物培養細胞に発現させたin vivoにおいても実施し、細胞内局在化およびタンパク質安定性との関連を検討する。H26年度の研究により、ペルオキシソーム局在性TAが標的化因子であるPex19pと結合する際には、Bag6を含むTRC複合体による認識を回避させている可能性が示唆された。上記無細胞翻訳系や動物培養細胞を用いたin vivoでの結合実験などを組み合わせて、小胞体局在性TAとペルオキシソーム局在性TAがそれぞれの標的化因子へどのようにして振り分けられるのか、その優先順位や選択性を決定する分子機構を明らかにする。また、Pex19p と相互作用してTRC複合体との結合等に関与するサイトゾル因子の同定も行う。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 11件、 謝辞記載あり 11件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 4件) 図書 (1件)
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