研究実績の概要 |
テイルアンカー型膜タンパク質(TA)は広く知られた翻訳共役輸送系に依らず、リボソームからサイトゾルへ放出された後に各オルガネラ膜へ直接輸送される。TA の細胞内選別輸送は、リボソームでの新生鎖翻訳時およびその直後から品質管理を伴いつつおきると考えられているが、その詳細は不明な点が多い。本研究では、TAをモデルとしたリボソーム翻訳時における新生鎖の運命決定機構およびオルガネラ選別輸送・膜挿入の分子機構を解明することを目的としている。 H29年度は、翻訳途上新生鎖TAの検出系を用いた解析およびBag6複合体 やPex19p等の既知TA輸送関連因子との結合解析等を行い、Pex26pなどペルオキシソーム局在性TAにおける翻訳遅延に関与する領域を同定し、TA輸送における役割について新たな知見を得た。また、先に同定したペルオキシソーム局在性TAと結合するサイトゾルタンパク質因子に関して、ゲノム編集技術により樹立したノックアウト細胞を用いた解析等により、これが新生鎖TAのペルオキシソーム輸送において品質管理に関与することを明らかにしつつある。 また関連した成果として、ミトコンドリア外膜局在性TAであるMitochondrial Rho GTPase-1(Miro1)に関し、私達は新たに2種のペルオキシソーム局在型ヒトMiro1スプライシングバリアント(Var2, Var4)を同定した。これらは、ペルオキシソーム膜タンパク質レセプターPex19pとの結合領域を含む挿入配列に依存してペルオキシソームへ輸送され、これまで未解明であった哺乳類ペルオキシソームの微小管依存的な細胞内長距離移動を担うことを発見し、国際誌J. Cell Biol.に発表した(Okumoto, K. and Fujiki, Y. et al.: J. Cell Biol., 217, 619-633, 2018)。
|