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2015 年度 実績報告書

働く新生鎖の生理機能と分子機構

計画研究

研究領域新生鎖の生物学
研究課題/領域番号 26116008
研究機関京都産業大学

研究代表者

千葉 志信  京都産業大学, 総合生命科学部, 准教授 (20523517)

研究分担者 伊藤 維昭  京都産業大学, 研究機構, シニアリサーチフェロー (90027334)
研究期間 (年度) 2014-07-10 – 2019-03-31
キーワード新生鎖 / 翻訳アレスト
研究実績の概要

本研究課題では、「はたらく新生鎖の生理機能と分子機構」の解明を目指している。以前、我々は、翻訳の途上でリボソームのトンネル内成分と相互作用することで、自身の翻訳伸長を一時停止(アレスト)させる因子を見出した。この翻訳アレストは、タンパク質の局在化装置の監視やその量的・質的制御に重要な役割を果たしていることがこれまでの我々の研究から明らかにされてきたが、その全貌は未だ未解明のままである。また、一般的なプロテオームメンバーが、翻訳途上鎖の状態で自律性を発揮し、自身の翻訳伸長速度を調節することで、その成熟や局在化に影響を与えるとの新たなパラダイムが生まれつつある。このような背景を受け、2015年度は、まず、枯草菌MifMとリボソームとの相互作用の全貌解明に向け、ドイツ・ミュンヘン大学のDaniel Wilson博士らとの共同研究で、MifMとリボソーム複合体の構造解析を行った。また、これまで解析がなされてこなかった、リボソームトンネル外でのリボソーム-MifM相互作用の解析を行った。その結果、MifMとリボソームのトンネル外領域成分との相互作用を含む多数の相互作用がMifMの翻訳アレストを安定化させていることを示唆する結果を得た。次に、東工大田口英樹教授らとの共同研究で、大腸菌プロテオームメンバーの網羅的な翻訳伸長プロファイルの解析を行ったところ、ほとんどのタンパク質は、合成途上の段階で翻訳伸長がポーズすることが明らかとなり、実際の翻訳において、翻訳伸長が一定速度で進行することはむしろまれであることが明らかとなった。京大森博幸准教授らとの共同研究においては、森らが海洋性ビブリオ菌で見出した新規翻訳アレスト因子VemPの分子機構を生化学的に解析し、森らによる結果と併せて、VemPが、リボソームのペプチジル転移反応を阻害することで翻訳アレストを引き起こしていることを示した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

2014年度から2015年度にかけて、MifM-リボソーム複合体の構造解析が大きな進展を見せ、MifMの翻訳アレストの分子機構の詳細が明らかになりつつある。この共同研究により得られた知見の幾つかは、申請当初予想していなかった重要なものであり、共同研究を介した構造解析以外の手法からたどり着くのはおそらく困難な知見であったため、当初の計画以上の進展といえる。また、2015年度は、東工大田口英樹教授らとの共同研究や、京大森博幸准教授らとの共同研究が大きな進展を見せた。いずれも、新学術領域の班員間での共同研究であり、各研究室がおのおの得意な技術を提供し合った結果、申請当初の予想以上に研究がスムーズに進行し、大腸菌プロテオームメンバーのほとんどが翻訳伸長時にポーズを経験するというインパクトのある知見や、新規アレスト因子の発見とその分子機構の理解の進展という、それぞれに重要な結果が得られた。新学術領域の班員同士の共同研究が生み出した成果という点でも意義深い。

今後の研究の推進方策

MifMの翻訳アレストに重要なMifM-リボソーム間相互作用のうち、リボソームトンネルの外部でも、翻訳アレストを安定化させる相互作用が存在することが、幾つかの実験結果により示唆されつつある。そのことを受け、今後、MifMとリボソームのトンネル外領域成分との相互作用の重要性の検討を、遺伝学ならびに架橋実験などの生化学的手法を用いて行う。
翻訳アレストの解除には、物理的な「引っ張り力」が重要であることが明らかにされつつある。この性質を利用し、細胞内で「引っ張り力」を生み出す因子や事象を感知するセンサーを構築する。
翻訳アレストの普遍性と多様性を理解する目的で、これまで全く報告例のない、古細菌の翻訳アレスト因子の探索を行う。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2016 2015 その他

すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 謝辞記載あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 3件、 招待講演 2件) 備考 (1件)

  • [国際共同研究] ミュンヘン大学(ドイツ)

    • 国名
      ドイツ
    • 外国機関名
      ミュンヘン大学
  • [雑誌論文] Integrated in vivo and in vitro nascent chain profiling reveals widespread translational pausing.2016

    • 著者名/発表者名
      Chadani, Y,, Niwa, T., Chiba, S., Taguchi, H. and Ito, K.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA.

      巻: 113 ページ: E829-E838.

    • DOI

      10.1073/pnas.1520560113

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Hydrophilic microenvironment required for the channel-independent insertase function of YidC protein.2015

    • 著者名/発表者名
      Shimokawa-Chiba, N., Kumazaki, K., Tsukazaki, T., Nureki, O., Ito, K. and Chiba, S.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA.

      巻: 112 ページ: 5063-5068.

    • DOI

      10.1073/pnas.1423817112.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Structure of the Bacillus subtilis 70S ribosome reveals the basis for species-specific stalling.2015

    • 著者名/発表者名
      Sohmen, D., Chiba, S., Shimokawa-Chiba, N., Innis, A., Berninghausen, O., Beckmann, R., Ito, K. and Wilson, D.
    • 雑誌名

      Nat. Commun.

      巻: 6 ページ: 6941

    • DOI

      10.1038/ncomms7941

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著 / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Nascent chain-monitored remodeling of the Sec machinery for salinity adaptation of marine bacteria.2015

    • 著者名/発表者名
      Ishii, E., Chiba, S., Hashimoto, N., Kojima, S., Homma, M., Ito, K., Akiyama, Y. and Mori, H.
    • 雑誌名

      Proc. Natl. Acad. Sci. USA.

      巻: 112 ページ: E5513-E5522.

    • DOI

      10.1073/pnas.1513001112.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Use of Bacillus subtilis MifM to dissect the YidC functions to facilitate membrane protein insertion2016

    • 著者名/発表者名
      Shinobu Chiba, Naomi Shimokawa-Chiba, Koreaki, Ito
    • 学会等名
      Gordon Research Conference
    • 発表場所
      Galveston, TX, USA
    • 年月日
      2016-03-06 – 2016-03-11
    • 国際学会
  • [学会発表] Nascent chain-mediated monitoring of a protein localization machinery2016

    • 著者名/発表者名
      千葉志信
    • 学会等名
      第18回Tokyo RNA Club
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2016-01-14
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] Nascent chain-mediated monitoring of the membrane protein biogenesis pathway2015

    • 著者名/発表者名
      千葉志信
    • 学会等名
      Nascent Chain Biology Meeting 2015 in Tokyo
    • 発表場所
      東京大学
    • 年月日
      2015-10-01
    • 国際学会 / 招待講演
  • [学会発表] 枯草菌MifM翻訳途上鎖とリボソームとの相互作用様式の解明2015

    • 著者名/発表者名
      千葉志信、Daniel Sohmen、千葉(下川)直美、伊藤維昭、Daniel Wilson
    • 学会等名
      2015年度グラム陽性菌ゲノム機能会議
    • 発表場所
      滋賀県大津市
    • 年月日
      2015-08-27 – 2015-08-28
  • [備考] 千葉研究室HP

    • URL

      http://www.cc.kyoto-su.ac.jp/~k4563/index-j.html

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公開日: 2017-01-06  

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