計画研究
[18F]THK-5351のタウPETプローブとしての有用性を確認する目的で、健常人、軽度認知障害、アルツハイマー病患者の計34名を対象に、[18F]THK-5351投与後90分間の撮像を行った。AD患者ではタウ病理像の好発部位である側頭葉内側部や側頭頭頂葉皮質を中心に[18F]THK-5351の集積が上昇し、βアミロイドの沈着を示す[11C]PiBの集積分布とは異なっていた。アミロイドPET陽性のMCI症例でも[18F]THK-5351の集積が大脳皮質で観察され、その集積量は健常人とAD患者の中間的な値であった。さらに[18F]THK-5351集積量と認知症重症度との相関が観察され、タウ蛋白の蓄積がβアミロイドよりも認知機能障害に直接的な影響を及ぼしていることが示唆された。以上の所見から、[18F]THK-5351は従来のプローブよりも高いコントラストでタウ病変を描出し、タウ病理像のモニタリングに活用できることが確認された。上記臨床研究と並行して、前年度に[18F]THK-5117 PET撮像を実施した5名の健常人、5名のアルツハイマー病患者でフォローアップ検査を実施した。アルツハイマー病患者では、側頭葉におけるプローブ集積が1年間で平均7%上昇し、健常被検者(平均1%)よりもタウ病理像の進展が加速していることを確認した。またαシヌクレイン蛋白を検出するための新しいPETプローブ候補化合物の探索を行った。ライブラリー化合物のαシヌクレイン蛋白線維との結合親和性を評価した結果、Kdが30 nM以下の化合物を見出した。本化合物はレビー小体型認知症患者脳切片のレビー小体を明瞭に染色し、プローブ候補化合物の一つと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
本年度の当初の研究計画では、タウPETプローブ[18F]THK-5117を用いた臨床PET 研究を予定していた。しかしながらこれまでの前臨床評価の結果、新たに開発したタウPETプローブ[18F]THK-5351が[18F]THK-5117を上回る結合特性や脳内動態を示したことから、プローブを切り替えて臨床研究を実施した。これまでのところ、当初の予定数(30名)を上回る34名の被検者で臨床評価を実施し、プローブの脳局所集積量評価はほぼ完了している。またタウ病理像とアミロイド病理像の分布の違い、認知機能障害とβアミロイド、タウ蓄積量との相関性についても検討し、期待通りの結果が得られている。MRI検査は形態画像収集のみ先行して実施し、脳萎縮とプローブ集積量との関連性の解析を進めている。灌流MRI(ASL)や拡散テンソル画像の収集は今年度は準備が整わなかったため、来年度から収集を開始する予定である。αシヌクレインを標的としたプローブ開発においては、スクリーニングを通じて候補化合物の探索を進めた結果、高い結合親和性と脳血液関門透過性を有するプローブ候補化合物が見出されており、当初の計画通りプローブ開発作業が進行中である。
来年度以降も、[18F]THK-5351と[11C]PiBを用いて、タウ蛋白、βアミロイド蛋白の脳内蓄積量の評価を進める予定である。これまでに検査を実施済の被検者において、来年度以降フォローアップ検査を実施し、βアミロイドとタウ蛋白蓄積量の経時変化を調べる予定である。また灌流MRI(ASL)や拡散テンソル画像の収集を開始し、脳血流、神経線維連絡とタウ病理像の関連性について検討する計画である。さらにα-シヌクレイン、TDP-43 に対して結合親和性を有するプローブ候補化合物の探索も継続して進める。
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Eur J Nucl Med Mol Imaging
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