計画研究
タウ発現マウスにおいて、内在性マウスタウは正常な軸索局在を示すのに対し、外来性ヒトタウでは細胞体、樹状突起に局在することを神経軸索局在についてマウスを用いて調べ、内在性タウタンパク質は生後 1 週齢で発現のピークとなり、その後緩やかに減少すること。また mRNA は生後 1 週齢から 2 週齢の間に減少することを見出した。タウの軸索局在は神経細胞の成熟に伴うmRNAの発現制御がタウタンパク質の軸索局在に重要であると考えられた。変異タウ発現マウスを用いたphos-tag法によるリン酸化解析では、凝集したタウで過剰リン酸化が確認され、可溶性タウではリン酸化亢進は観察されなかった。このことは過剰リン酸化がタウ凝集の要因となることを示唆している。タウ凝集阻害剤開発から化合物を得、その作用機序からタウのシステイン基がタウ凝集開始に非常に重要な役割を果たしていることを見出した。さらに、神経変性が起こる時、タウがsomatodendrite局在になる機構について調べたところ、タウmRNAはCamKIIなどのシナプスタンパク質と同様RNPと結合して樹状突起、シナプス領域に存在し、刺激によって樹状突起でタウタンパク質の過剰発現が起こる事を見出した。このことは老化に伴う神経の過興奮がタウのsomatodendrite局在を引き起こし神経細胞死へと導く要因であると考えられた。この神経過興奮はFUSKDマウスにおいても観察された。FTLDの原因の一つであるFUSのMapt exon10選択的スプライシングによるタウアイソフォーム (3R・4R)比率を制御する。FUS KDマウスにおいて、MnMRI解析を行ったところ、海馬で特異的にMnの取り込みが増強していることを見出した。このことは認知症における過興奮と類似する現象であり、神経脱落が生じる前の月齢で撮像したことを考え合わせると、4Rタウの増大は早期の神経機能障害を反映しているものと考えられた。
2: おおむね順調に進展している
タウタンパク質の生理機能と老化に伴う局在変化機構についてはほぼ明らかになってきた。過剰リン酸化とタウ凝集との関係ではリン酸化が凝集に先んじて起こることから過剰リン酸化の必要性を明らかにしている。タウタンパク質のアイソフォームの意義についても神経過興奮の原因となることが示され、当初の目標を達成しつつある。一方、ベータアミロイドからタウにつながる分子を見出すプロジェクトは条件検討に時間を要している。
27年度の結果からそれぞれのプロジェクトに関係性が見出されてきており、さらに班内での共同研究を加速し、タウタンパク質の老化機構全体を明らかにしていく予定である。さらに、これに加えて毒性を示すタウ凝集体を見出し、タウによる神経細胞死機構を検討し、明らかにする。ベータアミロイドからタウにつながる分子を見出すプロジェクトは条件検討に時間が掛かり過ぎるようであればプロジェクトの見直しを考える。
すべて 2016 2015
すべて 雑誌論文 (14件) (うち国際共著 3件、 査読あり 14件、 オープンアクセス 5件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 1件、 招待講演 5件)
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