計画研究
計画研究班はアルツハイマー病研究の初期からタウタンパク質が認知症を引き起こす原因であると考えてこれまで研究を行い、タウを過剰にリン酸化する酵素の発見、タウ凝集機構を明らかにしてきた。認知症治療を考える上で加齢に伴う正常タンパクから病原タンパクへと転換するタンパク質老化機構を明らかにする目的で研究を行っている。今年度、タウの軸索局在機構としてタウの軸索局在に関与するドメインとして PRR2 領域を同定した。生後1日目のマウス脳より微小管非結合画分を調製し、共免疫沈降法によりタウと結合しているタンパク質群の同定を行なった結果、タウ分子には複数のチューブリンおよび、タンパク質翻訳にかかわる多くの因子の結合が認められこれらがタウタンパク質の軸索局在に寄与することが示唆された。タウタンパク質の新たな生理機能を探索する目的でタウ遺伝子ノックアウト(KO)マウスを調べたところ、タウKOマウスの摂食量増大が観察された。この原因をさらに検討した結果中脳腹側被蓋野における神経活動が亢進が観察され報酬系の異常に伴う摂食量の亢進に起因している可能性を示唆した。脳発達期におけるタウのリン酸化とアイソフォームの変化についてマウス脳を用いて解析した。その結果、生後、高リン酸化されたタウは速やかに脱リン酸化され、0N3Rから0N4Rへ変化する。甲状腺ホルモン合成阻害剤(MMI)をマウスに与えたところ発達遅延に伴って脱リン酸化時期が遅延するが0N3Rから0N4Rへの変化時期は変わらなかったことから、タウのリン酸化とアイソフォーム変化は異なる制御を受けていることが示された。タウ凝集について15種類の異なるFTDP-17変異を持つヒトリコンビナントタウの凝集を経時的に観察し、野生型タウと比較したところ顆粒状タウオリゴマーの増大が全ての変異体に共通する凝集体であることが明らかになった。
2: おおむね順調に進展している
これまで毎年、計画班内ミーティングを行い、互いの研究進捗、アイデアを共有し、タウタンパク質の生理機能、リン酸化から凝集に至る機構を明らかにするため共同研究を進めている。具体的には共通に必要な抗体作成、スクリーニングを行い、それらを共有して使用している。宮坂、石垣、高島、久永らはこれまでの成果を論文にまとめ報告し、残る新たなテーマに取り組んでいる。ここまでにタウの局在機構、異常局在機構について神経細胞の過興奮によってタウmRNAからタウ蛋白への翻訳促進が起こりタウのsomatodendriteへの異常局在が起こるという新たな知見を得ている。この異常局在からタウ過剰リン酸化、凝集について今年度検討を行ない、タウの局在変化から凝集に至る分子機構を解明するところまで漕ぎついている。さらに、タウの新たな生理機能が明らかになりつつあることから、当初目標に対して順調に進展していると考えている。
・複合体の全容解明から生理的タウの存在様式を決定することにより、改めて毒性タウを定義する。さらに、タウオパチー神経の特徴である、タウの異常化と微小管の消失の関係について新たなモデルを構築し、解析する。・ヒト脳及びアルツハイマー病患者脳を用いて、GSK3β活性とタウの異常リン酸化の関連を調べていく。アイソフォーム変化に関わるスプライシング機構を解析する。・DREADDのシステムや電気生理学的な解析などを通じて、どのような報酬系の経路がタウの喪失に脆弱になって摂食異常に関与するのかを明らかにしていく。・毒性タウ凝集体の決定、細胞死機構を決定し、樹状突起において観察されるタウの過剰発現から細胞死に至る過程を明らかにする。・論文化を促進する
すべて 2018 2017
すべて 雑誌論文 (19件) (うち査読あり 19件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (25件) (うち国際学会 13件) 産業財産権 (2件)
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