計画研究
αシヌクレイン(αSyn)はパーキンソン病やレビー小体型認知症などの疾患に出現する線維性病理構造物の主成分である。我々は野生型マウスに線維化αSynを脳内に接種するとリン酸化αSyn病変が出現し、プリオン様の機序により時間経過と共に脳内に広がることを証明した。今年度は異なる脳領域(黒質、線条体、嗅内野)に線維化αSynを接種し、最初にどこに病変が出現し、どのように広がるのかを検討した結果、接種部位によってまったく異なる病変の出現、広がりを示すこと、病変は神経回路を介して広がること、さらに、線条体に接種した場合に顆粒状のタウやTDP-43の病変も観察され、他のタンパク質病変も誘導される可能性があることが示唆された。また、TDP-43の毒性について、全長TDP-43とTDP-43のC末端断片が別の機序により、神経毒性を発揮することを明らかにした。全長TDP-43は過剰発現すると、カスパーゼの活性化、G2/M期の停止を伴う強い細胞死を誘導した一方、C末端断片を発現すると細胞内で凝集し、増殖が抑制されたが、アポトーシスのような細胞死は確認されなかった。ヒト・プリオン病に関し、平成26年度は、ヒトからヒトへの感染が直接証明できる診断法を確立した。本邦でヒトからヒトへのプリオン感染が問題となっているのは硬膜移植(ライオデュラ)による感染である。MMiK(129Met/Met, intermediate type, kuru plaque)を指標として従来sCJDとして報告されている症例を検討したところ、わが国で1例、米国で1例のMMiKに相当する症例を見出した。
2: おおむね順調に進展している
タウ、αシヌクレイン、TDP-43について、試験管、細胞、マウスモデルを用いてプリオン様性質の解析を進めているが、いずれもほぼ予想通りの実験結果が得られており、順調に計画が進んでいると思われる。特に、伝播のメカニズムの一つとして、アルツハイマー病の原因遺伝子であるアミロイド前駆体蛋白質(APP)が線維化したタウの細胞内への取り込みの促進に関与していることを明らかにし、異常タンパク質伝播のリセプターとして働く可能性を示した点は非常に大きな成果であると考えられる。
現在、様々なタウオパチー患者脳に蓄積する異常タウの解析において、疾患ごとにタウの断片のバンドパターンが異なること、またそれがシードとしてはたらく最小単位である可能性について検討を進めている。生化学的解析から示された結果については、現在論文投稿の準備を進めている。また、αシヌクレインについては、様々なサイズ、重さの線維を形成し、それを培養細胞、そしてマウスに接種し、病変の形成の観察をすすめ、こちらも論文投稿の準備にはいりつつある。TDP-43については、様々な変異体や欠損体などを発現するプラスミドの作製をほぼ完了し、それらを大腸菌や培養細胞に発現してその性状やプリオン様性質を調べている。プリオン病に関しては、本邦例と米国例は、それぞれ感染ルートが不明であったのでsCJDと報告されてきたのだが、改めて感染ルートの糸口を探ると、本邦例では脳外科の手術後(硬膜移植は使用されていない)の症例であり、米国例は本人が脳外科医であった。本研究によってMMiKという表現系を示すCJDを見つけるとたった1例でも獲得性プリオン病であると診断可能であることを明らかとした。今後は、MMiKの感染性の検討を短期間で可能なように方法論を開発する予定である。
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