研究領域 | 脳タンパク質老化と認知症制御 |
研究課題/領域番号 |
26117005
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研究機関 | 公益財団法人東京都医学総合研究所 |
研究代表者 |
長谷川 成人 公益財団法人東京都医学総合研究所, 認知症・高次脳機能研究分野, 分野長 (10251232)
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研究分担者 |
北本 哲之 東北大学, 医学系研究科, 教授 (20192560)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | プリオン / TDP-43 / αシヌクレイン / 神経変性疾患 / 伝播 |
研究実績の概要 |
TDP-43C 末端の274-313と314-353の合成ペプチド線維形成しやすく、これらの線維は正常TDP-43を異常型に変換する能力を有していること、さらには細胞内で凝集したTDP-43のトリプシン耐性バンドは、FTLD-TDPのType A、Type Bの患者脳のものとよく似ていた。この結果は、C末端の異なる部分の重合により、構造の異なる TDP-43蓄積、病理形成が起こることを示唆する。αシヌクレインについて、37°C振盪条件下で得られた線維構造をもつαシヌクレインがシード活性を有しており、線維は超音波処理により断片化し、断片の量が増加するほどシード活性が高くなることを見出した。また、マウスαシヌクレイン線維を断片化し、マーモセット脳に接種すると、接種後3 ヶ月という短期間で異常リン酸化αシヌクレインの蓄積を伴う病変形成が確認され、病変は接種部位である線条体だけでなく黒質、扁桃体などに認められた。さらに黒質ではTH 陽性神経細胞の減少が観察され、凝集体はチオフラビンなどのβシートリガンドに陽性を示した。プリオン病については、異常化しやすいプリオン蛋白分子を遺伝子導入したノックインマウスを用いた感染実験を行った。具体的には、マウスPrPのC末端の2箇所をbank vole型に変更したmouse/bank chimera PrPを過剰発現させるトランスジェニックマウスを作製した。過剰発現させたマウスは、自然発病し海綿状脳症と異常なプリオン蛋白の沈着を引き起こすことが明らかとなり、2 箇所変更したキメラ型PrPもconversion-proneであることが明らかとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
αシヌクレインの伝播に関しては、マウスモデルだけでなく、野生型のマーモセットにも感染が成立することが二頭の成熟個体への実験から示され、論文をまとめることができたと共に、今後の実験計画をたてやすい状況ができた。また、βシートリガンドにも結合することが確認され、今後、αシヌクレインPETプローブの評価等にも有用と考えられた。 プリオン病モデルについては、過剰発現系であるトランスジェニックマウスを感染実験に使用すると自然発病による症状なのか、感染成立なのかを明確に区別することは困難である。そこで、conversion-prone PrPであるbank vole PrPのノックインマウスを作製し自然発病が起こらないことを確認後、Ki-bank voleを感染実験に使用した。予想通り、Ki-bank vole は広範囲なヒトプリオン病の感染実験に適していることが明らかとなった。加えてヒトPrPのノックインマウスでは感染が成立しなかったMM2Cタイプのプリオンまで、ほぼ100%の確率で感染が成立することが明らかとなった。
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今後の研究の推進方策 |
αシヌクレインの超音波処理によるシード効果の検討は、タウやTDP-43、合成リコンビナントタンパク線維にも応用が可能であり、今後、マウス脳に様々なタンパク質(特に患者脳由来の試料)を接種する際に活用できると思われる。またマーモセットにおけるαシヌクレイン伝播については、今後様々な脳領域に線維化αシヌクレインを接種することにより、病変が脳内の回路をどのように伝わるのか、詳細に検討していきたい。プリオン病については、高い感受性を示すマウスモデルの開発が、滅菌法の開発などになくてはならないツールであることから、MM2Cプリオンに対しても感染実験可能な良いモデル動物を開発する。
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