計画研究
我々は、脳タンパク質老化の進展メカニズムの解明と精神・神経変性疾患の治療を目的として、生体脳イメージング技術を駆使した治療評価系の開発を目指している。2013年、我々の研究拠点である放射線医学総合研究所より、生体脳のタウ病変を可視化するポジトロン断層撮影(PET)プローブとして[11C]PBB3が報告された(Maruyama et al. 2013 Neuron)。この[11C]PBB3の詳細な結合特性の解明と、より汎用性の高い18F(フッ素、半減期110分)で標識される改良型のPETプローブの開発を目的として、タウ病変と脳萎縮を加齢依存的に呈するrTg4510マウス(SantaCruz et al. 2005 Science)を海外より導入し研究基盤を確立した。本年度は、新たに開発したPBB3フッ素誘導体についてPETプローブとしての有効性を明らかにし、TSPO(18 kDa Translocator protein)を指標としたマイクログリアの活性化とタウ病変との間で正の相関があることをPETイメージングにて証明した。この結果は、典型的な脳タンパク質老化であるタウ病態を複数のPETプローブにより同一個体で評価したはじめての成果であるといえる。また現在、動物モデルを用いた同一個体の計時的観察によるtau PETイメージングと核磁気共鳴イメージング(MRI)の縦断的解析をすすめており、治療評価の指標となりうる標準PET画像と脳形態画像の構築を目指している。一方で、霊長類による脳タンパク質老化モデルの作出とその病態解析を目指して、アデノ随伴ウイルス(AAV)によるタンパク質発現モデルの構築をすすめている。本年度はマーモセット脳への導入実験を行なう目的でヒトタウ遺伝子を導入したAAVを作製した。また、MRIによるマーモセット脳機能計測を目的として、マーモセット専用のMRI用コイル・クレードルの開発を進めている。
3: やや遅れている
マーモセットの脳画像解析研究において、平成26年12月に、マーモセット脳機能研究の第一人者から、現行のコイル・クレードルの製作方式では予想に反し実験動物の生理状態が悪化するとの指摘を受けた。研究遂行上、実験動物の生理状態を厳密に維持する必要があるため、製作方式と製作期間の見直しが必要となり、予備実験が延長となった。それ以外は、概ね順調に進んでいる。
マーモセットコイル・クレードルの購入について延長申請を行ない、次年度からの実験開始とする。また、別の動物モデルとしてタウオパチーマウスのイメージング解析を進め、治療評価家にの確立を目指す。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 4件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (6件) (うち国際学会 5件、 招待講演 3件)
Frontiers in Neurology
巻: 5 ページ: 26
10.3389/fneur.2014.00026
Neurobiology of Disease
巻: 67 ページ: 37-48
10.1016/j.nbd.2014.03.002
J. Alzheimer’s Disease
巻: 40 ページ: S91-S96
10.3233/JAD-132429
Mol Neurodegener
巻: 15 ページ: 8
10.1186/1750-1326-9-8
Neurobiology of Aging
巻: 35 ページ: 1364-1374
10.1016/j.neurobiolaging.2013.12.009.