研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
26118002
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
植田 一博 東京大学, 大学院情報学環, 教授 (60262101)
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研究分担者 |
竹内 勇剛 静岡大学, 情報学研究科, 教授 (00333500)
峯松 信明 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (90273333)
大本 義正 京都大学, 情報学研究科, 助教 (90511775)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 認知科学 / 人工知能 / ヒューマンインタフェース / 社会系心理学 |
研究実績の概要 |
本研究では,非言語情報を利用した他者の内部状態推定の動的な過程の分析を通して,他者の内部状態推定を行う際に人が利用している認知モデル,すなわち他者モデルの解明を行う.特に,特に成人同士および成人と人工物の間のインタラクションを対象にする.本年度は以下の通り研究を実施した. 【研究1】相手に対する情動的な内部状態に基づく主体間の距離と位置関係の動的な変化を伴う原初的なインタラクションに注目し,各主体のコミュニケーション場の成立欲求を推定するための認知モデルを構築する.そのための,インタラクションの主体の視覚的情報(アピアランス),言語やジェスチャー,ポスチャーなどのシンボリックな情報を排除し,可能な限りミニマムなインタラクションを行える実験環境を構築し,データの計測・分析方法を確立した. 【研究2】 【研究2-1】旅行代理店の店員が客の要望を聞き出してプランを提案する際の対話を分析し,客の潜在的な欲求や意図の推定を可能にしている店員側の他者モデルを解明する.このようなデータ取得が可能な環境(店員と客役がテーブルを挟んで向かい合って座り, 両者の姿勢と顔方向計測ならびに韻律計測が可能な環境)およびそのための計測ツールを構築し,簡単な予備実験を行った.また,実際の店員と客の対話を分析対象とするためにいくつかの旅行代理店と交渉し,共同研究相手となる代理店を決定した. 【研究2-2】1.日本人と遭遇したことがない米国人150名を対象にした大規模な日本人英語書き取り実験結果を用いて,どのような発音をすると聞き取ってもらえないのかについて分析し,2.日本人が英語を読み上げる(話す)場合に,どの部分が聞き取り難くなってしまうのかを自動予測する技術を開発した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究1および研究2-1では,それぞれの目的を達成するための実験環境および計測ツールの解析と,そこで予備実験を実施することが目標であった.また研究2-2では,日本人英語書き取り実験結果を用いて,どのような発音をすると聞き取ってもらえないのかについて分析し,日本人が英語を読み上げる(話す)場合に,どの部分が聞き取り難くなってしまうのかを自動予測する技術を開発することが目標であった.これらは達成できたので,上記の通り判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は以下を実施する予定である. 【研究1】コミュニケーション場の成立に関わる他者の情動状態推定に関する研究:平成27年度は,平成26年度に実施した実験を通して得られたデータに基づき,互いに相手の姿が見えない2者同士が環境内で他者の存在に気づく直前までの過程において無自覚に表出させている経時的な身体の状態(位置,移動)に関する相互作用のモデル化に取り組む. 【研究2】コミュニケーションを通した他者の価値選好推定に関する研究 【研究2-1】対面販売状況における顧客の意図推定を可能にする他者モデルの分析:平成27年度は,平成26年度に決定した共同研究相手の旅行代理店において実際に実験を実施する.まずは,5月下旬の1週間で集中的にデータを取得する.その後,そのデータから,客の潜在的な欲求や意図の推定を可能にしている店員側の他者モデルを解明する.必要に応じて,年末から年度末にかけてさらにデータを追加取得する. 【研究2-2】非母語コミュニケーションを対象とした訛りに起因するミス・コミュニケーションの分析と訛りに対する選好度の自動計測:平成27年度は,英語の訛りを自動変換する枠組みについて検討する.複数の訛りを話せる同一話者から,同一テキスト・複数訛りのパラレルコーパスを収集し,これに声質変換技術を応用することで,訛りの自動変換を検討する.
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