計画研究
本研究課題では特に子供と大人のインタラクションに着目し,他者モデルを基盤としたインタラクションの心的ダイナミクスを解明することを目指している.他者モデルとは,他者の心的状態を推定して行動を理解・予測するための他者に関する認知モデルである.これにより我々は,他者との関わりの中でより良い自身の行動を決定できる.平成26 年度は,基盤となる『他者モデル』をこの期間に確立するため,計画に基づき以下の研究を行た.(1)実験パラダイムの提案と実装:本プロジェクトでは,リトミックと呼ばれる情操教育の場で,2歳児~5歳児の他者モデルの発達を,動きの摸倣の中から見出すことを目的に,実験の計画と計測装置の検討,実装を行った.加速度計とレーザーレンジファインダによる位置トラッキングシステムによって動きと位置を計測しこれらを解析することで,他者モデルの発達に関するモデルとその検証を行うこととし,これらのシステムを構築した.(2)データ解析手法の提案:加速度データの相関による動きの摸倣度合や,グレンジャー因果分析を用いた動き模倣の因果関係の解析,位置情報のトラッキングに基づく空間把握度合の解析を行う手法を開発し,実施した実験データに対する適用可能性を検討した.(3)実験の実施と評価:実際に2歳児クラスと5歳児クラスのリトミック場面における動きと位置の計測実験を行い,それらのデータを上記解析手法で解析を行った.(4)基礎理論:エージェント自身の行動を決定する内部過程のモデルを,部分観測マルコフ決定過程(POMDP)によってモデル化する手法を提案し,シミュレーションによってその挙動を検証した.また,他者モデルの運用と行動決定の枠組みを,モデルに基づいて検討した.
2: おおむね順調に進展している
本研究の当初の計画は,(1)実験パラダイムの提案と実装,(2)データ解析手法の提案,(3)実験の実施と評価,(4)基礎理論の4つであった.これらそれぞれに対して,研究実績の概要で述べた通り,全て順調に進行している.また,月1回の班会議を継続して行っており,実験の実施なども含めて既に10回以上のミーティングを行い,研究に関する議論を深めると共に,問題意識やプロジェクト進捗に関する情報の共有をしっかりと行っている.以上のことから,当初の研究目的に対して順調に進展していると言える.
本研究に関しては,計画通り全く問題なく進んでいるため,この流れを継続して研究を進める.特に毎月行うミーティングでの議論は,プロジェクトメンバだけでなく,実験に協力してもらっている幼児教育の専門家にも参加してもらい議論を深めており,非常に有意義である.これを今後も継続して行くことで,当初の計画以上に研究を推進できると考えている.
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