計画研究
本研究課題では特に子どもと大人のインタラクションに着目し,他者モデルを基盤としたインタラクションの心的ダイナミクスを解明することを目指している.平成27年度は,『他者モデル』の計算モデルを確立し,モデルを検証するための実験を開始するため,計画に基づき以下の研究を行った.(1)リトミック実験の実施と評価:実際に3歳児クラスと4歳児クラスのリトミック場面における動きと位置の計測実験を26年度に開発したシステムを用いて複数回(1年を通して横断的に8セッション)行い,それらのデータを下記解析手法で解析した.これにより,動きの摸倣と性格の相関関係など,いくつかの新しい知見を得ることができた.また,他者モデルを搭載したロボットの技術的な評価のため,ロボカップ@ホームに参加した.(2)データ解析手法の提案:26年度に開発した加速度データの相関による動きの摸倣度合や,グレンジャー因果分析を用いた動きの摸倣の因果関係の解析,位置情報のトラッキングに基づく空間把握度合の解析を行う手法を改良し,実施した実験データに対する解析の性能が向上することを確かめた.また,移動エントロピーに基づくinformation flowによる解析の検討を開始した.(3)基礎理論:26年度に開発したPOMDPによる内部過程のモデル化を発展させ,他者の状態を考慮した行動決定手法を提案した.また,モデルの初期パラメータや学習データが,様々な性格の他者に対する適応を説明できる可能性を示した.また,自身の内部状態の表現として,正直シグナルの理論を応用する手法を検討した.センシングとしては,総括班で開発している固定型のソシオメータを利用することを検討した.(4)応用の検討:子ども=大人インタラクションの解析結果の応用に関する検討を開始した.具体的に企業との共同研究を検討中である.
2: おおむね順調に進展している
本研究の当初の計画は,(1)データ解析手法の提案,(2)実験の実施と評価,(3)基礎理論であった.これらそれぞれに対して,研究実績の概要で述べた通り,概ね順調に進展している.また,月1回の班会議を継続して行っており,実験の実施なども含めて27度は15回のミーティングを行い,研究に関する議論を深めると共に,問題意識やプロジェクト進捗に関する情報の共有をしっかりと行っている.また27年度は,応用に関する検討もスタートし,企業との共同研究を含め来年度以降の発展が期待できる展開となっている.以上のことから,当初の研究目的に対して順調に進展していると言える.
本研究に関しては,計画通り問題なく進んでいるため,この流れを継続して研究を進める.特に毎月行うミーティングでの議論は,プロジェクトメンバだけでなく,実験に協力してもらっている幼児教育の専門家にも参加してもらい議論を深めており,非常に有意義である.これを今後も継続していくことで,当初の計画以上に研究を推進できると考えている.また,公募班との協調により,新しい方向性も見え始めており,企業との応用に関する共同研究と共に進展させていく予定である.
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人工知能学会誌
巻: 31 ページ: 19-26
International Journal of Sciences: Basic and Applied Research
巻: 24 ページ: 346-356