研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
26118005
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研究機関 | 国立情報学研究所 |
研究代表者 |
山田 誠二 国立情報学研究所, コンテンツ科学研究系, 教授 (50220380)
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研究分担者 |
寺田 和憲 岐阜大学, 工学部, 准教授 (30345798)
小林 一樹 信州大学, 学術研究院工学系, 准教授 (00434895)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 認知モデル / ヒューマンエージェントインタラクション / ヒューマンコンピュータインタラクション / 適応学習 |
研究実績の概要 |
HCIヒューマンコンピュータインタラクションにおける他者モデルであるユーザモデルを構築し,それを工学的に応用するという枠組みに基づいて,主に以下の2つの研究成果をあげた. 1. 適応認知モデルの構築:人間の適応認知モデルの構築を目指し,ヒューリスティックスの提案と実験的な検証を行った.相手の意図を推定し合う協力ゲームであるマッチングペニーゲームにおいて,人間の実験参加者とシンプルな適応アルゴリズムが実装されたコンピュータシステムが対戦し,そのプロセスにおいて,人間がコンピュータの適応アルゴリズムをどのように理解するかについて,いくつかのヒューリスティックスを仮定して,それを実験的に検証した. 2. 周辺認知テクノロジーPCTによるペリフェラル通知の実現と実験的評価:現在PCディスプレイ上でメール着信,アプリケーションの更新などの多くの情報通知が実装されているが,適切な情報通知の方法は十分に研究されていない.そこで,新しい情報通知手法として,メインタスク処理に集中しているときは認識せず,集中が途切れたときは認識できる周辺視野領域である視野ナローイング領域をPCディスプレイ上で同定して,そこに通知アイコンを提示するだけで,ユーザが通知受理可能になったときに自動的に通知に気づくペリフェラル情報通知を提案した.まず,実際に参加者実験により視野ナローイング領域を構成し,それを用いてペリフェラル情報通知を実装,参加者実験により提案法の有効性を示した. 3. PRVAの外見設計の実験的分析:オンラインショッピングの商品推薦擬人化エージェントPRVAの外見設計について,特徴的な外見と商品との組み合わせに対する参加者の購買意欲を実験的に調査し,アンケート調査の結果に対する因子分析と併せて,PRVAの外見設計に関する知見を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題について,当初予定していた研究テーマは,「1. 適応認知モデルの構築」,「2. 周辺認知テクノロジーPCT」,「3. 適応型ASE」の3つである.このうち,1. と2. については,予定通り,適応アルゴリズム理解の認知モデルの構築,ペリフェラル情報通知という形で研究が進み,成果もあがりつつある.一方,3. は研究テーマのブレイクダウンが予定通りに進まずに,当初の研究計画が実施できなくなってしまった.ただし,追加の研究テーマとして考えていた「PRVAの外見設計の実験的分析」が,予定以上の進捗を見せ,典型的PRVAの設計,典型的な商品の選択とマニピュレーションチェック,組織的な参加者実験が完了し,学会発表等の成果も出ている.これらを総括的に評価した達成度は,「(2) おおむね順調に進展している」であると考える.
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は,平成26年度の研究の積み残し分を遂行し完成させることに加えて,以下の新テーマの基に研究を進める. 1. リーダー・フォロワー関係の適応認知モデルの構築:協調作業で意思決定の対立時にどちらに従うかを決定するリーダー・フォロワー関係(LF関係)があるが,このLF関係はユーザ適応システムと人間との間でも生じるものであり,その成立条件が重要である.宣言マークマッチングゲームにおいて,人間のユーザとエージェント間におけるLF関係の決定要因モデルを実験的に解明し,そのモデルを知的インタラクティブシステム,HAIデザインに応用する. 2. 周辺認知テクノロジーの評価実験:スマートフォンなどの情報通知端末を上に乗せて,通知発生時にゆっくり起き上がることで,ユーザの作業を邪魔しないで情報通知を行う,形状変化デバイスを静音のモータにより実装し,その評価実験をパフォーマンス,アンケート,生体信号などの評価指標を用いて行う. 3. ヒューマノイドロボットインタフェースによるノンバーバル情報表出の促進:スピーチコマンドシステムをベースに,ユーザが対人であれば自然に表出されるノンバーバル情報を対人工物に対しても引き出せるようなヒューマノイドロボットインタフェースを実現する.まず,本年度は,対PCと対ロボットで,ユーザの表出するノンバーバル情報の違いを実験的に分析し,そのノンバーバル情報を引き出せるようなロボットのビヘイビアについて,検討する. 4. クリック音の表出による方向の伝達: 上下左右方向を直感的に解釈できるモノラルでシンプルなクリック音を開発し,実験的に評価する.この研究テーマは,連携研究者の小松孝徳(明治大学・准教授)と行う予定である.上下方向は,連続したビープ音の周波数変化(ビープASEの周波数増加/低下)で伝達し,左右方向はクリック音のクリック間隔周波数の非線形的な変化により伝達を考えている.
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