研究領域 | 認知的インタラクションデザイン学:意思疎通のモデル論的理解と人工物設計への応用 |
研究課題/領域番号 |
26118006
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
今井 倫太 慶應義塾大学, 理工学部, 教授 (60348828)
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研究分担者 |
小野 哲雄 北海道大学, 情報科学研究科, 教授 (40343389)
篠沢 一彦 株式会社国際電気通信基礎技術研究所, 知能ロボティクス研究所, 研究員 (80395160)
大澤 博隆 筑波大学, システム情報工学研究科(系), 助教 (10589641)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | ヒューマンエージェントインタラクション / 他者モデル / 相互適応 / 人工物 / インタラクションデザイン / ヒューマンロボットインタラクション / 環境知能 |
研究実績の概要 |
平成26年度では、人と機械がお互いの意図を推定しあいながらインタラクションを行う人工物を研究開発するために、身体化モデル、エージェントモデル、環境モデルの三つのタイプに分けて研究を行った。 身体化モデルでは、人と一体となって活動する人工物を想定している。例えば自律電動車椅子や自律走行車といった搭乗型の人工物を想定している。平成26年度では、自律電動車椅子を用いた研究を行うために、コンピュータで制御可能な電動車椅子を購入し、レーザレンジファインダを取り付け、研究の基本システムを構築した。特に、自己位置推定アルゴリズムを組み込むことにより、地図を作りながら現在位置が分かるシステムを準備した。また、基本システムを用いて、ユーザが想定する言語表現に応じて動作を変更するシステムを開発した。さらに、自律で移動する電動車椅子の経路の取り方からくる不信感を軽減する搭乗型擬人化エージェントの構築を行った。屋内を移動する電動車椅子は狭い場所に行くことが求められるため、エージェントは擬人化に必要な最小構成とし、電動車椅子への装着を可能とした。エージェントモデルでは、従来人型ロボットやアンドロイドで研究されてきた表情と他者モデルの関係の知見を利用し、相手が持つ他者モデルをコントロールする手法に関する研究を行った。他人が受け取る自身のモデルを拡張する手段として、人間の口の動きを再現し、ユーザの感情労働を代替するAgencyMaskを作成した。他者がユーザを見た時に、その感情に合わせた表現を自動で再現した。また、他班で研究されている他者モデルを再現するための投影型エージェントを作成した。環境モデルの研究では、実験システムの構築へ向けて、初年度はまず、ウェアラブルロボットの構築、および、人とロボットのコミュニケーションを効率的に行うために指示語の活用に関する研究を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成26年度の当初は、今後研究プロジェクトで使用する基本システムを準備する事が当初の計画であった。さらに、幾つかの研究では、準備だけではなく実際の成果を出すことができた。 身体化モデルの研究では、自律電動車椅子を構築し研究の準備をするだけではなく、実際に、ユーザの意図に応じて移動する機構のプロトタイプを構築できた。具体的には、ユーザが音声で車椅子に移動命令をする際の命令解釈システムを構築した。移動命令に含まれると想定される程度量表現(例:「おおきく」や「はやく」、「おそく」)を扱うことのできるシステムとなっている。本研究では、自律電動車椅子が自己位置推定アルゴリズムで構築する地図上に、ユーザが用いる程度量表現と、そのときの理想の移動軌跡(位置および速度データのセット)を学習させている。また、この学習はユーザ毎に行われる。程度量表現と行動の対応が、場所に依存して変化する問題を、地図データをキーとして行動を学習することにより解決している。似た場所では、似た地図が呼び出され、あたかも程度量表現が適応的に生成されたかのように移動することが可能となっている。また、程度量表現の個人差の問題は、ユーザ毎に学習するという形で現在は実現されている。 また、エージェントモデルの研究では、AgencyMaskを実際に開発しただけではなく、AgencyMaskのデモンストレーションをロボットに関する国際会議で発表した。また、投影型エージェントを動かすためのコミュニケーションゲームについての基本的な設計をすでに終えている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、人工物がどのように他者モデルを獲得するのか、また、人工物とインタラクションする人に対して、どのように人工物の意図を伝え、人工物に対する適切な他者モデルを持たせるのかについて研究するのが課題の中心である。特に、A01班,A02班ならびにB01班が研究を行っている人ー人インタラクションのモデルおよび、人ー動物インタラクションのモデルを、人ー人工物インタラクションへ適応可能なものなのか、適応できなければどのような違いがあるのかについて明らかにする。 身体化モデル、エージェントモデル、環境モデルそれぞれにおいて、他班でも扱っているインタラクション事例に近いインタラクションを想定し、人工物にモデルおよびアルゴリズムを作り込み、システムを構築する。作り込んだシステムを用いて、意図を読み合うインタラクションがどの程度可能なのかを検証する。また、検証結果を他班のモデルと比較検討することで、今後、改善するポイントや、人工物ならではの設計モデルを明らかにしていく。 具体的には、次の研究を考えている。身体化モデルでは、危険な状況における自律電動車椅子の振る舞いとユーザの行動目的をすり合わせる方法について検討する。また、不信感を軽減する要素と擬人化をささえる心理的要素についても検討する。エージェントモデルでは、AgencyMaskによって感情労働が代替されているかどうか、被験者を使った評価を行い、人ー人インタラクションにおける感情労働との違いを明らかにする。環境モデルでは、人ー人インタラクションおよび人ー動物インタラクションの知見をアンビエントエージェントの構築に活用可能かどうか検討する予定である。
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