研究領域 | 動的構造生命科学を拓く新発想測定技術-タンパク質が動作する姿を活写する- |
研究課題/領域番号 |
26119003
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安藤 敏夫 金沢大学, 数物科学系, 教授 (50184320)
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研究期間 (年度) |
2014-06-27 – 2019-03-31
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キーワード | 高速AFM / 走査型プローブ顕微鏡 / タンパク質 / バイオイメージング / ダイナミクス |
研究実績の概要 |
タンパク質が動作する姿を活写する高速AFMの高度化技術開発、応用技術開発、実証・応用研究を進め、従来の構造生物学と一分子生物物理学の限界を克服する動的構造生物学という新規分野を開拓し、それにより我が国の生命科学の発展に貢献することが本課題の最終目標である。本課題は、①多くの班員との共同研究で進めるタンパク質分子の高速AFM撮影によろ機能発現機序解明、②独自に進める高速AFMを高度化するための技術開発、の2本の柱からなる。
①についてはH27年度から開始するため、H26年度においては技術支援を行うスタッフの訓練と公開用の高速AFM装置1台を製作した。また、様々な試料系が班員から持ち込まれると予想されることから、多様な試料系に適用できる種々の基板調製法を検討した。基板調製については、確立したものを文書にまとめて班員に公開する予定である。また、いくつかのタンパク質系の高速AFM観察を独自に進めた。
②については、高度化技術として主に以下に挙げる2課題を設定して、その準備を開始した。(i)探針による電磁波増強効果を利用した超解像蛍光顕微鏡の開発とその実証研究、及び、(ii)光ピンセットと複合させた高速AFM措置の開発とその実証研究。これらの技術開発のベースとなる探針走査型高速AFMの開発は別のプロジェクトにおいて進めてきたが、ほぼ完成させている。(i)については、探針走査型高速AFM装置に光学系とフォトンカウンティング装置を組み込むシステムを設計・製作した。また、探針を金属コートするためのスパッタ装置を導入した。H27年度に装置全体を組み上げ、試験を行う予定。(ii)については、探針走査型高速AFMに近赤外レーザを導入した。また、レーザでトラップされるビーズとタンパク質分子とをつなぐ長いDNA鎖の調製法を検討した。H27年度には光ピンセットと高速AFMとの複合機で試験を行い問題点を見出し解決していく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
プロジェクト開始に当たるH26年度では、設定した各課題の推進に向けた準備を進めることに専念した。いずれも当初の予定通りに進捗しており、H27年度から本格的に開始する技術開発と、班員と協同して進める応用研究の準備を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
①班員と共同で進める応用研究:班員が試料を持ち込み、当グループが高速AFM観察をするやり方は機能しないと考えている。班員自らが装置を操作してデータを出して頂く。もちろん、ほとんどの班員はAFMや高速AFMの経験がない研究者であるため、まずは観察に至るまでの準備や装置操作のトレーニングをすることから開始する。その後、データが出始めるまで具体的な問題解決に向けアドバイスするとともに、互いに協力して問題解決に当たる。それぞれの系に応じて必要になる応用技術開発があれば、当グループでその開発を進める。
②独自に進める技術開発:これまでの多年に亘る装置開発の経験から、装置を組み上げてからが本格的な技術開発になると考えている。それ故、H27年度中に装置全体を組み上げ、動作試験を行えるようにする計画である。その動作試験から問題点を見出し、その解決に集中し、期間最後の1,2年で装置性能の実証研究に至るスケジュールを想定している。装置開発は細かい小さな問題をいちいち解決していくという地道な作業の連続である。華々しい成果をすぐに出すことは困難であるが、地道な作業の集大成としてブレークスルーとなる装置が完成する。初志貫徹してその目標に向かう覚悟である。
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