計画研究
昨年度までに、細胞内におけるRasの活性状態(GTP結合型割合)のin-cell NMR観測を行った結果、野生型Rasおよび発癌性変異体(G12V、G13D、Q61L)の細胞内におけるGTP結合型割合はin vitroよりも低下しており、細胞内の加水分解速度定数(khy)の上昇と、GDP-GTP交換速度定数(kex)の低下の両方が寄与していることが明らかとなった。本年度は細胞内におけるRasのGTP結合型割合に変調を与える要因を解明するため、(I)内在性GTPase活性化蛋白質(GAP)、(II)細胞内分子混雑環境の2点に着目した解析を行った。まず、内在性GAPの寄与を定量するため、代表的なGAPであるp120およびNF1をそれぞれノックアウトした細胞をゲノム編集法により作製し、in-cell NMRによりKO細胞中におけるRasのGTP結合型割合の変化を解析した。その結果、野生型RasのGTP型割合はいずれのKO細胞中においても有意な差は観測されなかったものの、T35S変異体ではNF1KO細胞中でコントロール細胞よりも顕著なGTP結合型割合の増大が観測された。したがって、細胞内Rasの加水分解亢進におけるNF1の寄与を選択的かつ定量的に評価できることが明らかになった。また、様々な分子クラウダ―を添加して、細胞内分子混雑環境を模倣した条件下におけるkhyならびにkexの測定を行った。その結果、グリセロール存在下ではkexが野生型および全ての変異体で顕著に低下してたことから、粘性の増大によって細胞内Rasのkexの低下が引き起こされていることが示唆された。
平成30年度が最終年度であるため、記入しない。
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (5件) (うち国際共著 1件、 査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 1件、 招待講演 3件) 備考 (1件)
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