計画研究
1. 上肢筋の再配置(腱付け替え手術)による中枢神経系の適応を調べるモデルである。3頭のマカクサルを対象に実験を行った。そして、手術前、直後、術後数ヶ月の間、上肢筋活動を継続して記録した。その結果、1. のモデルではまず手術翌日からサルは自力で餌を把握し食べる事が可能であり、数週間後には肘屈筋を用い精密把握やパワーグリップを用いて器用に餌を把握することが可能であった。また行動中の霊長類の体性感覚フィードバックを人為的に操作し、それに伴う脳内身体表現を観察するための基盤技術の開発に着手した。2 . 小脳神経回路に強力な可塑性を誘発する登上線維入力を、末梢電気刺激により確実に活性化する方法を発見し、それを小脳性運動失調の症状改善に応用する研究を推進した。具体的には末梢神経への電気刺激で複雑スパイクが誘発できることを、世界で初めて発見した。この発見は、小脳失調患者における新たな治療方法へ発展する可能性があるので、患者さんを対象とした研究に着手した。3 . 筋シナジー制御を本質とするヒトの手指運動に関して、(1)手指運動のばらつきを生じさせる神経機序の解明と(2)音楽家(ピアノ)ジストニア患者の運動野における手指脳内表現の異常に関する研究を主に行った。(1)については十分に練習を積んだ手指運動課題を用いて、運動領野には属さない広汎な前頭-頭頂領域の活動のばらつきがパフォーマンスのばらつきに関係することを示した。(2)についてはジストニア患者の運動野における5指の表現は、健常ピアニストに比べるとかなり空間的に重複していることを示唆する結果を得た。
2: おおむね順調に進展している
1. 筋再配置手術後、筋活動の入れ替わりが徐々に進行し、定常状態になることを見出した。この時定数は一定ではなく屈筋が先行していた。またこの適応には動的位相と静的位相があることが確認された。また、さらに、現在はAAVを用いた遺伝子導入技術を確立し、光遺伝学的手法による体性感覚の操作技術の開発に着手した。2. 末梢への電気刺激でほぼ100%に近い確率で複雑スパイクが誘発できることを、サルとマウスで確認した。この結果は、人工的な可塑性誘発により小脳性運動失調の病態を改善する可能性を示していた。3. 前頭-頭頂領域の活動を経頭蓋直流電気刺激で増強すると、パフォーマンスのばらつきがさらに大きくなることを示し、前頭-頭頂領域の活動とパフォーマンスのばらつきの因果性を明らかにした。また、ジストニア患者の運動野における5指の表現は、健常ピアニストに比べるとかなり空間的に重複していることを示唆する結果を得た。
今年度は3拠点において、研究が加速され、一部は既に論文化がなされた。今後は、個々のグループによる研究を進めるだけでなく、グループ間の連携研究にも重点を置く。そのため、例えば内藤グループと筧グループ間の脊髄小脳変性症患者に特有の運動のブレを軽減する臨床研究に着手、また関グループがリードして行う、脳卒中患者の筋シナジーを用いた評価(02系全体での大型共同研究)など、すでに開始している共同研究を加速させる。
すべて 2017 2016 その他
すべて 国際共同研究 (3件) 雑誌論文 (17件) (うち国際共著 2件、 査読あり 10件、 オープンアクセス 8件、 謝辞記載あり 12件) 学会発表 (18件) (うち国際学会 11件、 招待講演 4件) 図書 (3件)
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