計画研究
人の姿勢制御におけるfast dynamicsを解明するため、複数の感覚入力の同時変容に対する姿勢の変容のモデル化を目指した。まず、姿勢の変容をもたらす感覚入力の変容を観察するため、健常者による被験者実験を行った。具体的には、視覚・前庭感覚・固有感覚への入力を、それぞれ閉眼・直流前庭刺激・前脛骨筋腱への振動刺激により変容させ、圧力中心(Center of Pres-sure : CoP)および筋電図(EMG)の変化を、立位姿勢維持実験により観察した。その結果、それぞれの感覚変容に対し生理学的に妥当な姿勢の変容が観察された。この時、閉眼によりCoPの動揺が増大した。これは閉眼時に各感覚がreweightingされて統合されていることを示唆している。また、直流前庭刺激および振動刺激ではreweightingが起こらないが、筋緊張は増大する傾向が筋電図の測定により明らかとなった。これにより、感覚入力条件とreweighting・筋緊張の入出力関係が観察された。以上から、姿勢制御と感覚統合のfast dynamicsの観察・計測に一定の成果が見られたと考えられる。人やラットなどの歩行を対象に、運動制御に見られるfast, slow dynamicsによる適応メカニズムの解明を目指して、計測に基づくデータ解析、ならびに神経筋骨格系の数理モデルの構築と動力学シミュレーション研究を行っている。本年度は、計測データに基づく運動制御レベルでの数理モデルの妥当性の確認を目的として、ラット後肢の左右分離型トレッドミル歩行における筋電図の計測と解析を行った。その結果、筋活動のレベルにおいても、環境変化に依存して即時的な変化が見られ、運動制御のfast dynamicsレベルでの数理モデルの妥当性が示唆された。
2: おおむね順調に進展している
姿勢制御と歩行制御に関するfast, slow dynamicsの理解のために、実験結果に基づく解析、並びにモデル化を行っており,上述のように,多くの研究成果を出している.さらに,姿勢制御における長期的変容(slow dynamics)をモデル化するために、C03-1研究項目およびC03-4研究項目と共同で、神経系疾患における姿勢の変容を計測し、モデル化する研究を遂行した.またA02-2研究項目の中陦(岩手医科大学)らのグループと協働で、二足歩行の訓練を受けた二頭のニホンザルを対象に、四足歩行、二足歩行時に計測した下肢、上肢、体幹筋を含む片側9筋の筋電図に対して、非負値行列因子分解を用いて筋シナジー解析を行い、歩容間で共通・特異な筋シナジーの時空間構造を調べている.このように他の研究項目との連携も進めており,おおむね順調に進展しているといえる.
次年度以降では、より詳細なfast, slow dynamicsモデルを構築し、そのモデルの妥当性の検証を行う。また、他研究項目と連携し、生理学的裏付けとリハビリテーションへの応用可能性を調べていく。また研究成果を,The 8th International Sympo-sium on Adaptive Motion of Animals and MachinesやThe 2nd International Symposium on Embodied-Brain Systems Science等で発表予定である.
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すべて 雑誌論文 (12件) (うち査読あり 10件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (23件) (うち国際学会 11件、 招待講演 2件) 備考 (2件)
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