研究領域 | 脳内身体表現の変容機構の理解と制御 |
研究課題/領域番号 |
26120007
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
出江 紳一 東北大学, 医工学研究科, 教授 (80176239)
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研究分担者 |
稲邑 哲也 国立情報学研究所, 情報学プリンシプル研究系, 准教授 (20361545)
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研究期間 (年度) |
2014-07-10 – 2019-03-31
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キーワード | 幻肢痛 / 脳内身体表現 |
研究実績の概要 |
脳内身体表現への介入による新しいニューロリハビリテーションを確立するため,1)脳内身体表現を計測する:通常脳内身体表現は,外部から観察することが困難である.そこで,身体およびその周辺空間には,身体外に比べ注意が強く向けられているという.というnearby hand現象(Reed et al.2006など)に着目して,心理物理学的手法を用いて、脳が身体空間と認識している空間を定量化・可視化することで,脳内身体表現を反映する脳内身体表現マーカーとする.2)脳内身体表現への介入を通したニューロリハビリテーションを確立する:麻痺肢が実用肢となるには,単純に運動機能が改善するだけでは不十分であり,麻痺肢を自己の身体の一部と認識 する神経基盤が再構築され,環境に適応した運動指令が出力される必要がある.そこで,上記と同等の評価指標を用い,麻痺肢に身体保持感と運動主体感を積極的に付与することにより,麻痺肢の脳内身体表現の適正化と促進を目指すニューロリハビリテーション方策を確立する. 平成29年度では,これまで上肢に対して実施した方法と同様に,一側下肢切断者を対象として,義足と健常足に向けられる注意量を計測し,義足歩行の習熟度と義足に向けられる注意量との関係を検討した.また,VRを用いたリハビリテーション支援システムの開発においては,アプリケーション開発のためのシステム構成を改善し,領域内外の誰もがプラットフォームを容易に利用できるよう,多方面からの実験システム構築に関する要望に対応可能な体制を整え,臨床での効果検証の準備が進められた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
身体およびその近傍空間には,身体外と比べ空間的注意が強く向けられており,視覚刺激の検出処理が促進する.この特性を利用した刺激検出反応課題を通して,身体とその周辺における刺激検出に要する時間を測定し,得られる注意量の違いから脳内身体表現の推定を行っている.これまで上肢に対して実施した方法と同様に,一側下肢切断者を対象として,義足歩行開始時点(義足歩行習熟前)と退院直前(義足歩行習熟時)の計2回,義足と健常足に向けられる注意量を計測し,義足歩行の習熟度と義足に向けられる注意量との関係を検討した.切断者は義足歩行習熟によって,義足に対して自己身体と同様の注意を向け,義足を自己身体の一部と認識するような適応的変化が生じることが示唆された. VRを用いたリハビリテーション支援システムの開発では,領域内の共同研究者からの実験システム構築に関する要望に対応し,領域内での共同研究により収集したデータは国立情報学研究所にあるクラウド型データベースに格納され,同一の実験環境を多施設で分散して利用可能であることも同時に確認することができた.
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今後の研究の推進方策 |
本年度までに得られた新たな知見をまとめ,論文誌にて発表するための準備を進める. 片麻痺者の麻痺肢使用頻度と身体特異性注意との関係を縦断的に検討するための患者登録を開始し次年度より長期効果の検証を行う.片麻痺の患者に対して,実際に行っている動作を計測した上でVRを用いて動作を誇張し,HMDを用いてリアルタイムに視覚呈示することで動作に影響を及ぼすことが可能であるかどうかを検証するオーグメンテーションシステムの効果検証も行っていく.
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