平成十四年四月より同年九月末までの研究実績は以下の通りである。 まず、『大乗授戒経』のドイツ語訳注を完成した。これはテキストの翻訳だけでなく、『四分僧戒本』における具足戒と『梵網経』や『大乗授戒経』における大乗戒の比較分析を行い、その結果を注部分において示したものである。 次に、研究の取りまとめとして日本仏教における戒律の展開を解説する論文を執筆した。その内容は、律宗の衰退と天台宗の興隆の理由、平安末期までにおける律宗の変遷、平安末期の戒律復興運動、鎌倉時代から江戸時代までの変遷などである。この成果は最終的に邦題『日本の律宗の起源とその教義と実習の変遷』(原文ドイツ語)と題する428頁の著作となってドイツで出版された。
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