本研究は、移行期にある中央アジアの農業部門の構造変化を、実証的に分析する目的で実施された。始めに二種類のデータベースが構築され、それを用いて統計分析が行われた。まず、ウズベキスタンを中心とする中央アジア5カ国をカバーするパネルデータを収集し、農業生産の成長会計分析を行った。そこでは総合生産性の貢献について分析・考察がなされ、独立以降の総合生産性の推移が国ごとに違うことと、そして各国における農業分野における改革の内容やスピードの違いが、この国ごとの違いを説明しうることが分かった。 次に、ウズベキスタンにおいて個別農家クロスセクションデータが収集され、土地生産性や労働生産性の決定要因分析と、個人農のマーケッティング、投資、消費行動の分析が行われた。ここでは、どのような特徴を持った農業生産組織の単要素生産性が高いのか、また経営規模、土地の使用権の違い等が、どのようにパフォーマンスに影響を与えているのか統計的に検定された。また、これらに関する指標が、ウズベキスタンの異なった地域において違うのかが検定され、その違いをもたらす要因が考察された。その結果、現在のウズベキスタンの農業部門においては、経営規模、行政組織との関連の度合い、生産インセンティブの違い、また地域の違いにつながる自然環境条件の違いがパフォーマンスの違いを作り出していることが分かった。 データの分析結果は、ワーキングペーパーと大学の出版物としてまとめられた。そして、研究成果の一部は、2003年8月に開催される第14回国際農業経営学会と第25回国際農業経済学会大会でも報告されることになっている。
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