近年の大地震による鉄筋コンクリート造建築物の被害では古い建物を中心に鉛直荷重による軸力を保持しきれずに崩壊して多くの人命が建物の破壊により失われている。建物は本来この種の崩壊は生じないように設計されるべきであるが、特にせん断補強筋(拘束筋)量が十分でない古い建物の柱の軸力保持能力は明らかに不足しており、なんらかの補強が必要である。しかし、既往の補強方法はいずれも高価で工事も大掛かりであり、広く耐震補強を普及する上で障害になっている。我々の研究室では、軸力保持能力に焦点を絞った簡易で経済的な補強方法の開発を進めており、本研究もこの研究を一環として特にブルガリアの既存建築物を対象にした補強手法の有効性を確認した。本研究は従来にない補強工法を対象にしているため、実験による検証が不可欠である。平成13年度の研究では、柱模型試験体の破壊実験にょり基礎的な耐震性能を明らかにして、耐震補強手法の有効性を実証した。別予算により、鉄筋コンクリート造柱試験体合計14体を新工法による耐震補強の有無を変動要因として水平加力実験を行った。その一部の費用を負担して、実験に参加した。また、これも別予算で実施した補強効果を確認する震動実験に参加するための費用を負担した。鉛直荷重による軸力保持能力に着目して補強効果の有効性を検証するとともに、マクロな解析モデルを構築して実験による破壊経過を一般的に追跡可能にすることを試みている。さらに、補強および非補強試験体の震動実験を対象にして、動的解析のプログラムを開発中である。震動実験の結果の解析を共同で行い、共著者として論文を公表した。
|