中性B中間子混合振幅の正確な理論計算は標準理論の検証に留まらず、その背景にある新しい物理を探る有力な手段の1つである。我々はこの振幅の計算に必要なBo中間子からその反粒子であるBo中間子への遷移振幅を格子QCPを用いた数値的手法により計算してきた。bクォークは現在の計算機の能力では直接格子上で扱うことができないため、格子上でのbクォークの取り扱いには工夫が必要である。我々は既にいくつかの物理量の計算に実際に適用され、その有効性が確かめられている非相対論的格子作用を採用した。 この振幅を高精度で決定する際、振幅の軽いクォーク依存性を理解することも重要になってくる。残念ながら、現時点では質量が0付近の軽いクォークを直接取り扱うことはできないため、外挿せざるを得ない。これまでの外挿は多項式を使っていたが、QCDの定エネルギー有効理論であるカイラル摂動論の予言に従うと対数項も含まなければならないことがわかる。我々は外挿する際にこの対数項の寄与も考慮し、外挿値がどれくらい変化するかを系統的に調べ、最大で20%近くも変化することを見出した。そして従来引用されてきた系統誤差の見積もりが妥当でないことを指摘し、より軽いクォークを用いたシミュレーションの重要性を指摘した。また同時に、ある適当な物理量の比においては対数項の係数が殆んど0になることを見出し、より現実的な振幅の高精度決定法を提案した。
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