研究概要 |
今年度は、前年度までに学習させた仮想空間でのナビゲーション課題を遂行しているサルの頭頂連合野からニューロン活動を記録した.用いたナビゲーション課題は,サルの前に配置した100インチの大型スクリーン上に,コンピュータ・グラフィックスによる立体的な仮想空間を作り出し,その空間内のある地点から別の地点までジョイスティックを使って移動するというものであった.具体的には,各試行のはじめに目的地の画像を手がかりとして呈示し,約1秒間の間隔の後にスタート地点から指示した目的地まで移動することを課題とした.課題遂行時のサルの頭頂葉内側壁(領野としては、7m野,後部帯状回,脳梁膨大後部皮質)のニューロン活動を記録・解析した結果,仮想空間内の特定の場所において活動性を上昇させるニューロンが見受けられた.定量的な解析の結果,記録した361個のニューロンの内,ある場所に対して反応していたものは179(50%)で,場所によって活動性を変化させた,つまりある特定の場所に対して選択的に応答していたものは141(39%)であった.さらに,ある場所で右に旋回したときに活動性を上昇させるというような,特定の場所での特定の行動に反応しているニューロンも見受けられた.このようなニューロンは、ある特定のルートを辿ることに関係していると思われる.以上のような結果は,頭頂葉内側壁にはナビゲーションをおこなうことに関係したニューロンが存在することを示唆している.
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