(1)インドの染織品と職能カーストの歴史的研究1:10月-11月に英国、フランス、スイスに文献閲覧と資料調査のため赴いた。フランスとスイスにおいては博物館所蔵のインド染織品を調査した。英国においては、19世紀後半にインドを植民統治していた大英帝国とインド染織品との関わりを明らかにするために、大英図書館インド省セクション、ナショナル・アート・ライブラリー、V&A博物館アーカイブ、V&A博物館アジア・インド部門において文献を閲覧した。19世紀後半に英国で産業美術や産業デザインの発展の要請があり、東インド会社がインドの産品をロンドンに建設されたインド博物館に蒐集した経緯を明らかにした。また、英国内で機械化による繊維製品の開発のためにそれに応える形でインド各地から染織品が蒐集され、見本榎としてまとめられていった経緯やその用途についても明らかにすることができた。また、植民地期のセンサスなどからカッチ県周辺においてどのようなコミュニティーが染織業に携わっていたか明らかにした。 (2)インドの染織品の歴史的研究2:Anada K.Coomaraswamy、E.B.Havell、G.Birdwoodらの著作を大学図書館で閲覧し、19世紀後半の英国に市いて、彼らが、インドの美術や産業美術、手工芸の評価にどのような形で影響を与えたかを分析した。この成果については、日本の民芸運動と比較する形で、1月に国立民族学博物館共同研究『柳宗悦と民芸運動』シンポジウムにて発表した。この研究発表は、来年度に出版される予定である。 (3)人類学におけるアート研究:人類学においてアートがどのように研究対象になり、どのような視点から分析されてきたかについて、とくに染織品の研究を参照する形で過去の先行研究を大学図書館にて閲覧調査した。この成果については、10月に京都大学人文科学研究所共同研究『フェティシズム研究の射程』において発表した。
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